今日の話は、分かりにくいかもしれないが、重要なポイントだ。
21日のNY市場で、ブレークイーブンインフレ率(BEI)10年ものが2.60の大台を突破して2.64まで上昇した。
これは2012年9月14日の2.64%以来の高水準だ。
生産制約や賃金上昇によるインフレ懸念が想定より長期化するとの観測が強まっている。
例えば現地経済テレビでも、中国関連物資を多く扱うロスアンジェルス港湾関係者が出演して、港湾内の混乱は収まらず、更に、トラック運転手不足で、港湾からの出荷遅延が悪化していると語った。
いっぽう、パウエルFRB議長は、供給サイド由来のインフレが、当初の見込みより長引く可能性を明言しつつも、来年には鎮静化すると考えられるので一時的との見方を変えていない。
市場では、物価上昇2%以上のオーバーシュートを許容するFRBが、結局、経済過熱の抑え込みに関して後手に廻るリスクが意識されている。
「パウエル議長が判断を誤る可能性」が期待インフレ率の上昇加速を誘発しているといえよう。
21日には、米10年債名目利回りが、一時1.7%の大台を突破する場面もあった。
しかし、米財務省が毎日発表する米10年債実質利回りは、20日マイナス0.92%から、21日マイナス0.96%へと、マイナス幅を拡大している。
かくして実質金利が下落すれば、金は買われる傾向になるので、名目で1.7%突破でも、金価格への影響は限定的だ。
なお、市場の潮流を見れば、期待インフレ率は10月に入り、2.38%から2.64%まで上昇が加速している。
今後、2.7-2.8%の水準になり3%も視野に入ると、ドル実質金利も更に下落することになろう。
金利上昇は金価格下落の要因という、市場のこれまでの経験則は、再考の必要があろう。