異常なまでに膠着状態が続いていた金市場で、蓄積された売買エネルギー噴出が顕在化した。
キッカケは、9月消費者物価上昇率。
予想されたこととはいえ、年率5.4%と前月の高水準を維持した。
世界的な供給網の混乱によるコストアップと、9月米消費者の旺盛な消費性向が共振して、インフレ率を高めている。
パウエル議長は、想定よりインフレが長引いているが来年には落ち着くと語る。
それを市場は信じていない。
来年まで高インフレは続くと見ている。
今回の米国消費者物価上昇の内訳を詳細に見ると、かなり広範囲に拡散している。
この物価上昇は米国人消費者に転嫁されたわけだが、それでもめげずに、消費を続けている。
企業にとってはコストアップだが、その分は、しっかりと取引先に転嫁している。
雇用統計でも確認されたように、人手不足のなか、賃金は上がっている。


こうなると、これまで傍観してきた金市場も、いよいよ、インフレ・ヘッジとしての金の出番か、と臨戦態勢に入った。
KITCOグラフ緑線は一気に1,790ドルを超えた、一日の上げ幅としては30ドルを超える。
しかも円安基調ゆえ、円建て金価格には上昇圧力がかかる。
テクニカルに見れば、次は、1,800ドルの壁を超えられるか。
ここは、かなり厳しい。
金投機筋の動き次第だが、ひとまず1,800前後で利益確定売りが出やすいであろう。
金市場内には、依然、弱気派も少なくない。
同日発表されたFOMC議事録でも、テーパリングは2022年半ばまでに終え、次は利上げ検討の段階との議論が明記されている。
ここは冷静な見極めが必要だ。

 

 

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