先週金曜日に発表された6月米雇用統計の非農業部門新規雇用増22万4千人増は、かなりのサプライズであった。事前予測は16万人前後。更に米債券市場の「ささやき」事前予測では13万人程度と見られていた。「16万人でも甘い。実態は13万人程度であろう」とトレーダーのチャットでは囁かれていたのだ。とにかく、どの程度雇用統計が悪化すれば、7月の利下げ幅が0.25%から0.5%になるか、もっぱら議論のテーマであった。雇用統計発表までの過程でISMはじめ、地区連銀製造業指数など、かなりの悪化が相次いでいたからだ。それゆえ、低めの雇用統計を見込んでいた多くのトレーダーたちは、バツが悪い表情を隠せない。
トランプ氏も複雑な思いであろう。
「雇用」は政権のメインテーマだ。
大幅に増加したとなれば、それみたことか、と自慢げなツイートが流れても不思議はない。
しかし、今回に限っては、トランプ・ツイートの反応が音無しの構えだ。
市場が7月FOMC利下げ期待で盛り上がっているときに、雇用統計が望外の良い数字を示せば、トランプ氏が渇望する利下げが正当化されなくなる可能性があるから、と筆者は深読みしている。
雇用増と利下げは両立が難しい。
「FRBが利上げなどという理不尽な行動をしなければ、新規雇用者数は30万人を超えていたはず」などとトランプ氏なら呟きかねないが。
雇用統計発表を挟んで利下げ観測が後退するやNY金は1410ドル台から1380ドル台まで急落したが、その後、1400ドル台を回復している。雇用統計以外の米経済指標は依然悪化しているので、今月末のFOMCで利下げとの見方が根強い。