本日朝日新聞朝刊に金の連合広告が載っています。
昨日は読売新聞朝刊に同様の連合広告が出稿されました。
コロナ禍、金への興味が個人投資家の間で高まっていることを映す現象といえるでしょう。
筆者も、両紙に金についての原稿を依頼され寄稿しました。
ここでは、読売新聞の本紙原稿と連動して、詳しく説明するWEB原稿を以下に採録します。
タイトルは「金価格を押し上げる『インフレ』の正体」。
本紙の原稿では、一般読者向けに、努めてやさしく解説しましたが、WEB版では、もう少し踏み込んでお話します。
まず、今、市場が最も懸念するインフレの正体について。
話はリーマンショックに遡ります。
病気に例えれば、心筋梗塞のような重篤かつ急性の症状に対する処方箋は「量的緩和」という劇薬でした。
ドル・ユーロそして円などの主要国通貨を刷れるだけ刷ってばらまき、力づくで株価を押し上げ、景気を良くするという新療法は、たしかに効きました。
しかし、世界経済が本格的に立ち直った直後に、コロナという未曽有の疫病危機が勃発したのです。
リーマン後にばら撒かれたマネーは、回収されず市中に残り、その上に、コロナ救済のため更に多くの通貨がばら撒かれる結果になったのです。
その金額たるや、米国・EU・日本で、それぞれ600-900兆円前後という天文学的な規模です。
こうなると、紙幣はいくらでも刷れるので、その価値は薄まり、投資家は、なにか「刷れない」通貨はないのか、模索を始めます。
そこで、「金なら刷れない」と思い当たり、金を保有することで自らの財産の価値が薄まり目減りすることを避ける動きが注目されるようになったのです。
それゆえ、金を買うという投資行動は、ドル・ユーロ・円などの通貨に対する不信任票とも言えましょう。
この不信任票を国として投じているのが、中国とロシアです。
米ドルが世界の通貨として君臨していることを快く思わず、手持ちのドルを売却して、「外貨準備」として金を大量購入・公的保有しています。
いっぽう、世界の民間部門でも、トランプ大統領の出現以来、米国への信頼感が揺らぎ、米ドルへの不信感が強まっています。
そこで、発行国の無い通貨という意味で「無国籍通貨」と呼ばれる金に関心が集まっているのです。
さて、ここからは、実務的な話に移ります。
ずばり、金はいつ買えばよいのか。
答えは、金購入のタイミングを時間軸で分散すること。
プロでも最高値、最安値を正確に予測することは出来ません。
保険会社など機関投資家が最近は金を買う事例が増えていますが、その買い方は、やはり「積立方式」なのです。
次に、財産のどの程度を金で保有すればよいのか。
答えは、概ね10%が目途です。筆者が勤務していたスイス銀行貴金属部でも世界の投資家に対して、金は10%程度と、徹底して説いていました。
金を持ちすぎると単なる投機になってしまいます。
株・国債・預金などと合わせて保有してこそ、金の役割が生きるのです。
金は金利もつかず、配当金も生みません。
それゆえ資産運用の世界では脇役です。
主役の株や債券などの調子が悪いとき、価値が上がる傾向があるので、「金は嵐の晩に輝く」とも言われるのです。
投資というより保険に近い概念とも言えます。
次に、金の現物の保管について。これも悩ましい問題です。
自宅に保有すれば、水害で流されてしまうリスクもあります。
そこで、信頼できる会社の金庫に共同保管してもらう方法が、異常気象の近年、注目されるに至っています。
最後に、近年人気のビットコインと金について。
仮想通貨は別名デジタル・ゴールドと呼ばれ、なにかと金と比較されます。
値動きは、なんといってもビットコインのほうが派手ですよね。どちらが良いか。
まず、価値の交換手段としては、ネット環境があれば支払い手段になり得るビットコインに軍配が上がるでしょう。金現物でモノは買えません。
但し、ビットコインは価格が数か月で倍になったり半額になったりするので、交換機能といっても疑問符はつきます。
いっぽう、価値の保存機能となれば、これは金のほうが優れています。
金には数千年にわたる通貨としての歴史もあります。
更に、希少価値に裏付けされた実物資産なので、ブロックチェーンという技術によりネット上で価値が成り立つビットコインより安心感はあるでしょう。
今後は、それぞれの長所を生かし、共存してゆくと、筆者は考えています。
以上が個人投資家向け寄稿文です。
なお、最近は、機関投資家向けZOOMセッションも増えています。
オープンセミナーではなく個別に質疑応答の形で進めるのですが、年金運用に携わる機関投資家は、やはり、長期的な視点で、株価バブル崩壊に備え、金に注目していますね
。更に、年金積立金の価値を保全するために、金のヘッジ機能について、詳しく質問してきます。
そこで、筆者は、米国最大年金基金カルパース(カリフォルニア州職員共済年金基金)のCEOを9年勤めた人物(ジェームス・バートン氏)がワールド・ゴールド・カウンシルのCEOにリクルートされ、6年間一緒に仕事をしたときの経験について語ることにしています。
なぜ、カルパースが金投資に興味を持ったのか。
既に、皆さんの大切な年金積立金の一部が金で運用されているかもしれない時代なのですよ。