11日のNY市場では、今の市場の実態を映す象徴的な場面があった。
まず、朝方に発表された7月米国消費者物価上昇率が年率5.4%。高水準だが、市場予測を若干下回り、やや頭打ち傾向か、と市場では解釈された。
そして、NY時間午後に入り、ロバート・カプラン・ダラス連銀総裁が米CNBCに生出演。「量的緩和縮小(テーパリング)は9月FOMCで決定して、10月から開始というのが私の意見だ」と、かなり大胆に踏み込んだ発言をした。
市場の想定より、かなり早いタイミングだ。FOMC内部でタカ派の勢いが強まっているとの印象も強まる。
当然、ドル長期金利は上昇かと思いきや、米10年債利回りは、1.3%台前半のレンジ内で急落した。
実は、同じ時間帯で、米10年債の入札が行われ、結果が好調だったのだ。
つまり、機関投資家の運用先として米国債の人気は依然高く、入札でも買われ、その結果、利回りは下落したのだ。
米国債券市場では、テーパリングを懸念した米国債売りより、カネ余りのなかで安全資産として米国債買いが強まることの影響のほうが強いということだ。
インフレ懸念が強まるなかで、ドル長期金利が急落するという「謎の現象」も、このような状況を映す現象と言えよう。
消費者物価上昇率5.4%という数字も、ここがピークで「一過性」との見方と、当初の想定より長く続くとの見方に割れている。
後者の見方を持つ投資家のマネーは、インフレヘッジとしての金の市場に流入中だ。
対して、「インフレ一過性派の見解のマネーは、金売りに走っている。
その結果、国際金価格は暴落後、1,750ドル前後まで買い戻され、その後、一進一退の展開である。