昨晩のNY株急落は史上最高値圏でのポジション調整の域を出ない。
既にNY市場関係者の多くは実質夏休みモードに入っている。
定例ZOOM会議も、リゾートのホテルからの参加が増えている。
いつまで続くか手探りの中で、貴重な「経済再開」の解放感を、貪欲に楽しんでいる様子が窺える。
この薄商いのなかで、この程度のボラティリティ(価格変動)は想定内であり、8月ジャクソンホール中央銀行フォーラムまでは続きそうだ。
昨晩も、ダウ平均が一時500超急落の場面もあったが、騒ぐのはメディアだけで、市場内では傍観姿勢が目立った。
彼らの真の懸念材料は「秋の危機」だ。
気温が下がり、まだ多い低接種州を中心に変異種が活性化。
米国全体でもマスク着用義務が再び発出され、経済回復に冷や水、とのシナリオだ。
ワクチン接種の進行でマスク着用の切迫感が薄れているだけに、失望感も強くなる可能性がある。


更に、デルタ型の影響が拡大すると、FRBも無視できないことは、パウエル議長自ら認めているところだ。テーパリング(量的緩和縮小)の議論どころではない。
タカ派に転じたはずのFRBが再びハト派に戻るかもしれない。
9月FOMC後に発表されるドット・チャート(参加者の金利予測分布表)も、6月とは様変わりになる可能性もある。
それほどにNY市場がデルタ種不安で揺れていた日本時間昨晩に、「日本、緊急事態、五輪無観客」の見出しが突如流れた。
この報道に機械的プログラム売買が、安全資産としての米国債買いで反応したので、結果的に1.2%台半ばまでのドル長期金利続落を誘発した面も否定できない。
日本のワクチン接種対策のもたつきも、この報道で初めて知ったNY市場関係者が少なくない。日本株の見切り売りを追認するごとき展開になっている。
注目の米10年債利回り下落も、基本的には、インフレトレードとして人気があった米国債売りの巻き戻しを映す現象だ。
特にFRB高官発言など特定材料があったわけではない。
とはいえ、さすがに1.2%台まで下がると、底値感も強まる。
特にチャート上で、ここが下値抵抗線として意識される。
テクニカルに市場の眼が集まるということは、投機的売買に米国債券市場が振り回されていることの証とも読める。
なお、世界でも抜群の流動性を誇る米国債は、世界各国の外貨準備や、年金基金の運用には欠かせない存在であり、根強い買い需要があることも改めて市場が実感する成り行きになっている。
「安全資産へのマネー逃避」というより「流動性への逃避」との表現のほうが実態に近い。
いつでも売買できることの有難みを、リーマンショック時に思い知らされた経緯もある。
1.7%台の高値から1.2%台までの急落を経て、荒っぽい調整局面が米債券市場でも続きそうだ。
なお、安全資産として米国債と円が派手に買われたわりに、金の買いがイマイチ。
たしかに1,800ドル台は回復したのだが、未だ、1,800ドル台の攻防の状態だ。
ここでも、夏季休暇モードで、やはり8月のジャクソンホール待ちの姿勢が目立つ。


さて、ファイザー、ワクチン3回接種へ、動き。
デルタ株など変異種への接種効果が弱いので、追加接種用ワクチン開発に着手。
8月から臨床試験開始。
但し、重症化予防には2回接種で有効。
事実、死者数は接種とともに減少している。