FOMCを読む、「影の強力なタカ派」はイエレン前議長
「もしイエレン氏が、財務長官ではなく、FRB議長であったなら、テーパリング積極派であったか」
ビッグイベントである今週15-16日のFOMCを控え、先週、ウォール街で話題になったことだ。
現財務長官の立場で、イエレン氏は、ロンドンで開催されたG7財務相会合後に「この10年ほどは、あまりにも低すぎるインフレ、あまりにも低すぎる金利との戦いであった。
正常な金利環境に戻ることが望まれる。金利が高い環境は、悪いことではなく、むしろ良いことだ」と語った。
決して「利上げ」に言及してFRBに圧力をかけたわけではない。
前代未聞の規模となるバイデン大型財政支援策を賄うための米国債増発は不可避であり、そのための資金調達コストは、これまた前代未聞の低水準でなければ累積財政赤字は膨張するばかりだ。
それゆえ、財務長官の立場では、米国債利回りが低いほうが望ましい。
とはいえ兆ドル単位の国債発行が長期金利上昇要因になることは避けがたい。
財務長官としても、節度ある長期金利上昇は認めざるを得ないのだ。
とはいえ、もしイエレン氏がFRB議長であったなら、労働経済学者として、米雇用回復は未だK字型で、テーパリングには慎重な姿勢を取ったであろう。
そもそもイエレン前FRB議長はゼロ金利政策を主導するハト派の代表的存在であった。
立場が変われば、公的発言も変わる、と話題になっているのだ。
財務長官が意識するのは長期金利で、短期金利はFRB議長の専任事項であるが、今や、大規模国債購入を通じてFRBも長期金利上昇を抑制することが出来る。
特に、FRBは物価連動債も購入対象に含めているので、直接的に期待インフレ率を抑え込む役割も果たしている。(期待インフレ率は、普通国債と物価変動債の利回り格差から算出される。)
このような環境で、今週15-16日にFOMCが開催される。
市場は、パウエル氏が「インフレは一時的」との説を変えることなく、テーパリング議論を封印すると見ている。
「封印」との表現を使ったのは、FOMC参加者のなかに、テーパリング支持派(タカ派)がおるからだ。
例えば、カプラン・ダラス連銀総裁は、日本経済新聞取材に「量的緩和の縮小は、経済データ次第」と答え、早期の政策転換もありうるとの認識を示した。
米国CNBCのインタビューでは、FOMC参加者の金利予測分布を示すドット・チャートの最新版(3月発表)で、2022年利上げを予測する「タカ派」4人なかの1人であることを自ら認めたこともある。
異例の告白として注目された。但し、同氏は、今年のFOMC会合で投票権を持たない地区連銀総裁である。
(現制度では、各年、同総裁のなかから3名ずつが、持ち回りで投票権を持つ)。
更に、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は、「テーパリングについて話し合うことを話し合う」可能性に言及している。
パウエル氏の「利上げなど考えることも考えたことがない」との発言から一歩踏み込む発言として市場では注目された。
先週も5日にフィラデルフィア連銀のハーカー総裁が「毎月1,200億ドルの国債・住宅担保債権の買い入れを縮小することについて、少なくとも考えることは考える時期ではないか」と語った。
こうなると、市場の関心は、今週のFOMC声明文と同時に発表されるFRB経済レポート(6月版)のなかにあるドット・チャートに向く。
3月版では2022年4名であった2022年利上げ派の数が、増えているのか否か。
前回の例では、その後、公表されたFRB議事要旨のなかに、数名の(a number of)参加者が量的緩和縮小についての議論に前向きであったことが明示されマーケットでは材料視された。
但し、今回は、直近の米債券市場で、急上昇する物価指標にもかかわらず10年債利回りが1.4%台にまで低下中だ。その実態はショートスクイーズと現地NY市場では見られている。
テーパリングを見込み、金利が上昇すると価値が下落する米国債の空売りが「最も混みあうトレード」と言われるほどに積み重なり、FOMC直前に、空売りの担保となる米国債の不足が懸念されたからだ。
したがって、NY市場の大勢は、中期的にドル金利上昇トレンド再開に傾いている。
目下の問題は、その背景のインフレが「一時的」か否かということに尽きる。
ここについては、今回のFOMCに関する限り、「一時的」とのパウエル議長の強い見解を覆すほどの状況証拠は見当たらない。
このような市場環境で、国際金価格は、1,900ドルが壁になっている。
ドル長期金利動向が不透明だからだ。
2021年もやっと年央を迎えたところ。趨勢として1,600-1,700ドルの下値を確認して、1,900ドルまで戻し、ここは時間をかけて値固めの時期であろう。
円建て金価格に重要なドル高・円安の基調も変わらず。
さて、テレビ見ていたら、アリナミンVのコマーシャルに、私のTVの相方だった江連裕子キャスターが出ていてビックリ。
さっそく聞けば、「疲れのV字回復」と称するCMで「経済評論家」役だそうな。「朝まで生テレビ!」を模した作りだと。
彼女は近年、数社の社外取締役をこなしていたけど、所属は多くの女子アナを擁する「セントフォース」という事務所。
先日、写真アーカイブを整理していたら、海外ロケ(主要国が外貨準備として保有する金塊数千トン保管するNY連銀前にて)や、江連キャスターが日経CNBCを辞めるとき鈴木亮編集委員と二人で花束贈呈役やったときの風景などが出てきた。