米個人投機家共闘買い再燃
NY株式市場では個人投資家共闘買い再燃が話題になっている。
今回の主たる標的はAMC(映画館経営)株だ。
一日の値動きも、一時は37ドル台にまで売り込まれたかと思えば、68ドル台まで買い戻される場面もあり、大荒れだ。
まさにジェットコースター相場。年初来の上昇率は3000%!まであった。
この超高値圏でAMC社は増資に動いたが、ヘッジファンドのマドリック・キャピタル・インベストメントが850万株を購入。
数時間後の高値圏で売り抜けた、と外電は報じている。
この増資にあたり、AMC側はSECへのファイリングで、「当社の株価は、社業とは無関係の市場環境を映している。
ボラティリティが激しく、投資家は損失を蒙るリスクがある」とまで異例の「リスク情報開示」を行った。
同社はコロナ禍に直撃され昨年は破綻の危機にあったが、今回の「神風」で、破綻回避どころか、新規事業への投資資金まで確保できる結果となっている。
前回のレディットマネーの乱は、空売りヘッジファンド対個人投資家共闘買いの構図であったが、今回は両陣営とも買いと売りが交錯する乱戦模様だ。
ただ、個人投資家がオプションを多用してレバレッジをかける手法は変わらない。
満期日が数日後に迫り、権利行使価格(ストライクプライス)が実勢より大幅に乖離するオプションの価格は安いので、特にレディット投資家軍団のお好みだ。
そのような、俗に言われる「ポンカス・オプション」でも、一日の株価変動が激しいので、翌日には実勢価格圏内に入るかもしれない。
「宝くじ」感覚で当たる可能性はある。レディット画面でも、大儲けを自慢するエキサイティングな書き込みや、大損を嘆くヒステリックな表現が溢れる。
筆者もレディットのなかのウォールストリートベッツに登録して書き込んでみたが、確認のため画面をアップデートしたとき、既に3ページ目に落ちていた。
総じて、この異常な市場現象をマクロ的に見れば、フロス(泡)に過ぎない。
ユニークな話題性が先行している感が強い。
敢えて言えば、ウォールストリートベッツのなかには、まともなプロの意見も書き込まれ、参考となることもある。
しかも無料である。
対して、ヘッジファンドは一流ホテルで開催される投資コンファレンスで様々な投資戦略を語り、高額の参加料を払った機関投資家が聞き入る。
とはいえ、共闘買い軍団は、殆どファンダメンタルズ(企業業績、マクロ経済環境)を無視して、ひたすらモメンタムを追う。FOMO(自分だけが取り残される恐怖感)に駆られる個人も少なくない。
このような個人投資家に対して、AMC側は、無料ポップコーン配布や入場料割引などの「株主優待」を提供した。
しかし、デイ(日計り)トレードどころかミニット(分単位)トレードとまで言われる投機手法ゆえ、優待には殆ど無関心だ。
ウォール街のトークでも「優待」は話題になっていない。
メディアが面白がってポップコーンのイラストを流す程度である。
「優待」は日本で特に人気がある「株式投資」なのだ。
なお、今回は「銀」が標的にはなっていない。
前回は銀が投機の対象になり乱高下した。