「企業も公平な負担を」、覚悟のイエレン発言

「インフラ投資と増税はパッケージで米企業の国際競争力を改善させる。企業側も公平な負担をすべきだ。」
18日、イエレン財務長官のこの発言が、米国株式市場で株売りを誘発した。
「多少の金利上昇はやむを得ず」との発言(後に修正発言)が株安を引き起こした記憶も未だ生々しく残る市場には刺激的な効果があった。
しかも、発言の場が企業団体ともいえる米国商工会議所。さっそく同会議所のトップが「インフラ投資は結構だが、それをファイナンスするには他にも方法があるのではないか」と異論を唱えた。
アウェイとも思える状況での発言には、イエレン氏にも相当の覚悟があったと思われる。
FRB議長時代のイエレン氏は「困ったときのイエレン頼み」と言われるほど「市場の味方」であった。
しかし、財務長官となると、「市場の敵役」も演じねばならない。
NY市場のトレーディング・ルームでは、イエレン氏への不快感をあらわにするコメントも聞かれた。
18日のダウ平均が、この発言も一因となり、引け際30分ほどで急落。結局、前日比267ドル安となったからだ。


更に、中期的な視点でも、この事例は、市場の関心が金融政策から財政政策に広がる兆しと映る。
テーパリング・リスクは、ほぼ語り尽くされ、時期が不透明だが、市場は既に覚悟している。
しかし、財政リスクに関しては、市場内の本格的議論もこれからで、未だ織り込まれていない。
未曽有の規模のバイデン大型財政支援策を賄うための増税が強い反対論で削られれば、国債増発圧力が強まるは必至だ。
しかし、頼みのFRBは、量的緩和拡大で国債購入を増やす状況ではない。
結局、米国債保有国一位二位の日本と中国など外国人保有者に依存する債券市場構造となっている。
しかも、グローバルな外為市場ではドル安傾向が顕著で、18日にはドルインデックスが90の大台を割り込んだ。
ドル円相場の円安ドル高は、グローバルな視点では円主導の例外事例といえる。
このドル安傾向は、米国製品の国際競争力を強めるものの、米国債の購入意欲を削ぐ要因となる。
結局、バイデン政権の大型財政支援策には、有効で実現可能なファイナンス案が見当たらず、年後半にかけ、市場の関心が金融政策と財政政策の危ういポリシー・ミックスに及ぶことは避けられまい。
その予告編をアウェイの場でイエレン財務長官は演じて見せたのかもしれない。
この事例は、金市場にとって、極めて重要だ。
リーマンショック後に金価格が当時の史上最高値をつけるに至ったキッカケが、米国債格下げであった。
そして、コロナ危機の今、「発行者がいない資産」「誰の債務でもない資産」「信用リスクとは無縁の価値を持つ資産」としての金が見直されつつある。


さて、ワクチン接種が進む米国では、テキサス州知事(共和党)が、マスク着用を強制する州内公的機関や公務員には罰を課すと発言。
どの国でも、政府と地方の軋轢は絶えない。
それにしても、マスクしろ、と言って、罰せられるとは。国の文化の違いか。
それから、マスク外し傾向強まるなかで、米国では歯を白くする審美歯科とか歯磨きが人気化。
日本も早くそうなるといいね。


なお、米国経済テレビは、写真のように「日本の医師たちがオリンピック中止を要請」とのブレーキング・ニュースを流していたよ。

 

 

ニュース