インフレ期待率、新高値更新、パウエル氏を疑う市場

ダウ最高値更新が囃された5日のNY市場で、プロの視点は、5年ブレークイーブン・インフレ率が年率2.68%まで上昇したことだ。金はインフレヘッジで買われるので、期待インフレ率は重要な指標だ。


対コロナ有事対応で未曽有の財政拡張・金融超緩和が実施されて以来、最高水準である。今年年初1月4日には1.98%、今回の日本の連休前4月28日には2.54%であった。連休中に、良好な経済指標が発表され、イエレン財務長官の「金利上昇やむを得ず」発言もあった。その結果、5月5日には2.68%まで上昇したのだ。


米5年債実質利回りも、マイナス1.88%にまで下落している。GW前の4月28日にはマイナス1.68%であった。


「これでもパウエルFRB議長はインフレは一時的と頑なに言い通すのか」


既に、マーケットでは「FRBに逆らうな」から「FRBを疑え」との反応が強まりつつある。


アップルなど大手ハイテク企業の決算は良好であったが、株価は伸び悩んでいる。「インフレの足音」「テーパリングの可能性」に怯える投資家が増えているからだ。


パウエル氏は、特に雇用面で、労働参加率が依然低位にあることを問題視している。就職活動を諦めた長期失業者が明確に減少しなければ、緩和縮小には動かず、との姿勢だ。


その意味では、今週末の雇用統計の重要度が増す。


既に5日に発表された民間部門の雇用者数を示す4月ADP雇用統計は74.2万人増と良い結果が出ている。


7日発表の雇用統計も、米国でのワクチン接種進展・コロナからの回復を映し良好な数字が予想されている。


とはいえ、パウエル議長が俄かに「テーパリング」考慮を示唆するとも思えない。


市場は8月下旬のジャクソンホール中央銀行会議を一つの節目として見ている。


それまでに、インフレ期待が、どう動くか。


パウエル議長も注目せざえるを得まい。