パウエル氏はバブル、バイデン氏は株安、いずれも容認姿勢
日本時間4月29日早朝にはFOMC後のパウエル議長定例記者会見。同夜には米国1-3月期GDP発表。
この二つのマーケット・イベントの間に、バイデン大統領初の施政方針演説が行われた。
まず、パウエル議長は、今後米国経済が過熱してバブル的様相になっても、それは一時的と繰り返し、超金融緩和継続を明示。市場に一定の安堵感を与えた。
そのうえで、次に登場したバイデン大統領は、市場が聞きたくない増税案について切り出した。「富より労働に報いる」。
富裕層と企業に増税負担を求め、中間層に再配分の基本方針を確認した。
その政策実行の過程では、多少の株安は容認か、と市場は身構える。
そこで、マーケットの不安感を和らげるかのようなタイミングで、米GDP6%の高水準と発表。
結果的にダウは200超高で引けた。
GDP好調でドル長期金利は1.7%に接近。ドル高でもあり、国際金価格は売られて1,760ドル台。
市場とのコミュニケーションを重視するパウエル氏と、「富の象徴」ウォール街とは一線を画すバイデン氏と、姿勢の差が鮮明だ。FOMCとGDP発表の間に施政方針演説を振ってきたのが、バイデン氏のせめてもの市場への配慮か。
バイデン流のロジックは、中間層に再配分された所得の一部が401k等を通じて株式市場に還流することで、長期的資産保有傾向は維持できるとも読める。
富裕層に対するキャピタルゲイン課税強化も、売却しなければ課税されないわけで、結果的に資産の長期保有を促進するとの見解もある。
とはいえ、イノベーションを主導する起業家精神の芽を摘むとの批判は根強い。
更に、富裕層が年度内の株売却を急ぐ可能性を示す事例として、昨晩のアップル決算後の同社株価低下が引き合いに出された。
売上高と純利益ともに1-3月期として過去最高を記録。Blowout(暴噴)とまで表現された好決算であったが、同社株価は前日比マイナス圏で引けた。
「噂で買って、ニュースで売る」類の売りとの意見もあれば、富裕層の売りが五月雨式に出てくる兆しとの見解もある。
総じて、市場は、バイデン大統領の市場とのコミュニケーション姿勢を未だ計りかねている。
そもそも大統領選挙期間中から、バイデン氏は、自らが生まれ住んだペンシルベニア州スクラントンを「庶民の街」、トランプ氏が住んでいたニューヨークのパークアベニューを「金持ちの街」と位置付けた。
「トランプ氏がパークアベニューから見るのはウォール街だけ。彼が考慮することは株式市場だけだ」とも述べていた。
そこで、金融証券業界はトランプ陣営を上回る政治献金をバイデン陣営に投じた。
当時、それは「増税リスクへのヘッジ」と理解されていた。
バイデン政権下のホワイトハウスのお出入りが許され「お手柔らかに」と物申せる環境づくりと見られていた。
果たして、この「先行投資」のリターンがどれほど期待できるのか。
ウォール街は計りかねている。
金も「富の象徴」のイメージがあるので、バイデン氏の関心は薄いであろう。
特に規制の対象になるという可能性も薄い。