バイデン政権、株安容認か、増税案は金・暗号資産も直撃
日本時間午前2時過ぎ、突然、ダウ平均が急落した。バイデン政権が投資収益課税強化に動く、との外電報道に市場が反応したのだ。既に大統領選挙のときから富裕層の譲渡益課税を39%以上に引き上げる案を明示していたので、マーケットも覚悟はしていた。
とはいえ、いよいよ現実の問題となれば、警戒感は強まる。
特に株式市場が気になる点は、バイデン大統領が「エリート集団」のウォール街と一定の距離を保ち、中間層重視の姿勢を打ち出していることだ。
トランプ前大統領の如く株価上昇歓迎コメントでも出せば、民主党急進左派のエリザベス・ウォーレン上院議員が間髪入れず反論するであろう。
僅差過半数の上院では一人でも造反議員が出れば、バイデン大型財政政策は暗礁に乗り上げる。
時あたかも、アルケゴス問題が「富裕層マネーの暴走、手助けする投資銀行、利用されるデリバティブ金融商品」の構図を露わにした。
(詳細は本欄4月9日付「アルケゴスの余波、市場が恐れる株式売買益39%課税案 」を参照されたい。)
但し、増税案は共和党が強く反対している。財政調整法による単独強行採決という切り札も、あくまで特例措置であり、続けて使える手段ではない。
実現まで数か月は要するであろう。
まずは、今回、年収百万ドル以上と定義されている富裕層の年度内株式売却がスローモーションの如く進行する展開が予想される。
更に、次に控えるのが本丸ともいえる、法人税21%から28%への増税案だ。
その企業収益への影響を市場は未だ織り込んでいない。
新大統領との蜜月期間も終わると、いよいよ結婚生活の現実の厳しさを噛み締める時期となりそうだ。
更に、影響は暗号資産にも及ぶ。
昨晩、ビットコイン価格は増税報道前の55,000ドル台から一時は50,500ドル台まで急落する場面があった。
結局前日比4%安の水準で推移している。
コインベース上場時に64,000ドル台の最高値をつけた後、規制強化などを嫌気して調整局面に入っているが、相変わらずボラティリティ(価格変動)が激しい。
今回の急落劇は、富裕層マネーが暗号資産市場にも流入していることを映す現象といえよう。
ゴールドマンサックスも富裕層向け資産運用部門の顧客に対し、ビットコインなど暗号資産を投資対象に加える方向だ。
モルガン・スタンレーもビットコインにのみ投資するファンドを立ち上げた。
200万ドル以上を預託して、「積極的なリスクを許容できる」富裕層限定という触れ込みである。
両社とも、アルケゴス問題を最小限の損失で切り抜けた。富裕層ビジネス拡大路線は止まらない。
暗号資産分野もファミリーオフィス分野も、トランプ時代の規制緩和で骨抜きにされ後手に廻ったSECの巻き返しが注目される。
ちなみに新SEC委員長ゲンスラー氏は、民間時代にMIT(マサチューセッツ工科大学)で暗号資産とブロックチェーンについて教鞭をとっていた。
そして、米国での投資収益に対する課税強化対象は金にも及ぶであろう。
富裕層の金購入は多くが次の世代への資産継承を視野に長期保有だ。
しかし、短期売買目的の投資家にとっては、無視できない問題となろう。
短期投機筋の利益確定売りが出やすい傾向になりそうだ。
さて、今朝は米国経済テレビもブレーキング・ニュースで「日本、非常事態」を報道。Emergencyと英訳されると、戦時中の非常事態を連想させる言葉なので、強い緊迫感が伝わる。
日本経済マイナス成長か、東京五輪危惧などが語られていた。
米国務省の渡航中止勧告対象国150か国に日本が入らなかったのは、ジョー(バイデン)のヨシ(菅)に対する「思いやり」か…。