日銀動向、米長期金利続騰を誘発
18日のNY債券市場では、取引開始直後からいきなり10年債利回りが1.75%まで急騰した。そこで指摘された要因の一つが日銀、長期金利操作の変動幅をプラスマイナス0.25%に拡大、との日経電子版報道であった。長期金利上昇のドミノ現象が起こりつつあるとの認識が広がった。
今回の米長期金利急騰の過程では、日銀の存在が、異例の注目の対象となっている。
3月8日には、黒田日銀総裁の「長期金利変動幅を大きく拡大することが必要とも思っていない」との衆院財務金融委員会での発言がNY市場では材料視された。
著名投資家デビッド・テッパー氏が「黒田発言により、日本の生保など機関投資家は、今後、米国債購入に動かざるを得ない。日本人機関投資家の米国債買いは、10年債利回りの安定要因になる」と発言。日本市場の視点では、この議論に賛否はあるものの、同氏の発言は過去にも米株価を動かす事例が少なくない。当日も、ダウ工業株30種平均も306ドル高で引けた。
この経緯があるゆえに、日銀が一転、長期金利変動幅拡大に動くとの情報によりサプライズ感が生じたのだ。今回の日銀政策決定会合にも異例の注目を浴びている。「NY時間深夜だが、なにかあったら知らせてくれ」NY市場の知己たちの依頼からは切迫感が伝わってくる。
更に、FOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長が、長期金利急騰について、明確なコメントを避けたことも要因の一つとされる。
パウエル氏の真意はどうなのか。これまで「金利上昇は健全な経済回復を映す現象」と語ってきたパウエル氏は、金利急騰を放置するのか。
真意を測りかね、疑心暗鬼の市場が、パウエル氏を試しにかかっている、とも解釈される。長期金利抑制に有効な手段を持たぬFRBの弱点を突く投機筋の仕掛けとも読める。市場では、これまで「FRBには逆らうな」と言われてきたが、今や「FRBを疑え」に変わりつつある。
いっぽう、米長期金利上昇の質的変化も指摘され始めた。
筆者は、1.5%を「臨界点」として、それを超えると、良い金利高から悪い金利高に変質する可能性を論じてきた。
その1.5%が本格突破された今、NY市場では、米国債超増発、財政赤字膨張問題が、改めてクローズアップされ始めている。イエレン財務長官とパウエルFRB議長コンビによる財政ファイナンス、というような表現が会話のなかで出てくるようになった。主要経済紙でも、米国債保有者としてFRB、日本、中国の動向が論じられている。
米長期金利急騰も新たな段階に入ってきた。
金価格も、単に名目金利上昇に反応して下がる段階から、財政不安の悪い金利に反応して上がる局面が徐々に始まりそうだ。
KITCO金価格24時間グラフの緑線が昨日の乱高下。急落後、反騰している。売りと買いが交錯の状態だ。