「銀」急騰、ヘッジファンドも個人連合も買いの危うさ

レディットマネーの買いの標的に銀も加わったとされ、銀相場が急騰している。これはご用心。
たしかに、市場規模が小さいので急騰しやすい。「貧者の金」と言われ、単価が安いので、買いやすい。
しかし、現在の銀市場ではヘッジファンド側も買いポジションを積み上げてきた。そこに、個人連合が更に買い攻勢を仕掛けている。ヘッジファンドの空売りポジションを締め上げるという構図ではない。両者、買いの「共闘」である。その結果30ドル近くまで銀価格は急騰したが、需給では全く正当化できない水準だ。銀は太陽電池の需要もあり、熱伝導性が良いので電子部品素材にも向いている。しかし、現物需給より先物市場での思惑による売買の影響のほうがはるかに強い。価格が急騰すれば、リサイクルで大量の銀が還流してくる。しかも外為市場ではドル高に振れている。コモディティーにとってドル高は売り要因だ。買いのモメンタムが臨界点に達すれば、一転、急落の連鎖となろう。
更に、NY銀先物市場ではCFTC(商品先物取引委員会)の規制が効いている。過熱すれば、取引所経由で、証拠金引き上げ、更に、ポジション規制を発動する。ドッド・フランク法により、CFTCの規制は強化された。
銀ETFへのマネー流入も増えている。こちらは、SEC(証券取引委員会)の管轄だが、先物に比し、レバレッジは無い。
銀鉱山株の上昇率が最も目立つ。こちらは、株式投資の分野なので、新たなレディット銘柄と理解できよう。しかし、特に空売り比率が高くはない。
更に、ウオールストリート・ベットでの書き込みも知見不足を露呈している。荒唐無稽な陰謀説が語られ、誤字・誤解も見られる。例えば、billion banks(10億の銀行)が価格操作という書き込みだが、おそらくbullion banks(金銀を扱う銀行)の間違いではないか。そもそも銀行が結託して価格操作しているという途方もない陰謀説は笑止としかいいようがない。現場を知るものなら、操作できるなら、苦労はない、という実感であろう。
なお、銀は米国人投機家が特に好む。ジムロジャーズ氏も銀好きだ。これには歴史がある。1930年代から1960年代にかけて米国では民間金売買が禁止され、その代替として銀が取引された。その後、金が自由化されても、銀選好度の高さがDNAのごとく残っているわけだ。
総じて、銀急騰劇は、レディット相場の危うさを露呈する展開になっている。
なお、案の定、やはり市場が小さいプラチナにも波及。1110ドル突破してきた。こちらのほうが長続きしそう。