７５５本通算本塁打数ハンク・アーロン氏が１月２２日死去した。実は、１月５日に同氏はテレビカメラの前でモデルナ・ワクチン接種を受けていた。「ワクチン懐疑者が多い黒人層に対して少しでもお役に立てるなら」との気持ちであった。しかし、特に問題視されなかった。ところが、ロバート・ケネディー氏がツイッターで疑義を呈した。
「ワクチン接種直後の高齢者で原因不明の死が続いている。その一環ではないか。」
アーロン氏の死因は発表されていない。
おりからワクチン接種拡大に手間取るバイデン政権にとっては悪いタイミングの出来事となった。

１９０ページに亘る「ワクチン白書」を大々的に発表したが、共和党の州知事からは不満の声が強まる。フロリダ州知事は、かなり敵対的表現で、現連邦政府のワクチン接種の遅れを批判した。身内からも異音が聞かれる。ニューヨーク州とミシガン州の著名民主党知事は、ワクチン直接購入の検討を始めた。
 

バイデン氏の長年の側近で大統領首席補佐官に指名されたクレイン氏も、テレビ生出演で「１００日で１億回接種」は「野心的で大胆な目標設定」と認めざるを得なかった。州の大病院や大規模老後施設にまでは供給ロジスティックも出来るのだが、その後の末端までが、「カオス」と言われるほど混とん状況にある。
その結果、NBC調査によれば、ワクチン接種がうまく進んでいると答えた人は僅か１１％。責任は連邦政府にあるとの答えが６３％に達した。
この調査結果の根底には、悪化する国内分断が指摘される。
以下のNBC最新世論調査結果が興味深い。
 

まず、共和党員でトランプ支持者が１７％。党支持者が１７％。
次に、民主党員でバイデン支持者が１７％。サンダース・ウオーレン支持者が１７％。
くしくも１７％で４グループに割れた。
１． ９兆ドル規模の追加コロナ予算も、その成立が危うい。
議会は、政治的駆け引きに明け暮れている。
 

バイデン大統領は是非とも超党派合意で進めたい。長年の盟友マコーネル共和党上院院内総務との信頼関係が頼りである。しかも、長年の議会生活で多くの議員の「顔」を熟知していることが強みだ。とにかく議会にも「結束」を訴え続ける。
ところが、身内のペロシ下院議長（民主党）からでさえ「過去のことは水に流して結束できるものか」との懐疑的見解が発される。１．９兆ドル案の今後の議会審議について、マコーネル氏は「上院審議を遅らせている弾劾を２月まで後回しする」との予算優先の助け舟を出した。その結果、まずは主要閣僚の議会承認は今週にかけ、相次いで進む見込みだ。バイデン政権も空洞化から脱しやっと初期起動の状況となる段階だ。
しかし、１．９兆ドル予算案を審議する上院はバイデン政権にとって難関だ。ブルーウエイブのおかげで、副大統領の決定票を入れて５１－５０の過半数を得た。しかし、通常の予算案決定には６０－４０の過半数が必要とされる。そこで共和党員から１０人の造反者は期待しにくい。そこでペロシ氏は「例の特別措置を使い、２週間以内、つまり弾劾審議再開前に決めよ」と迫る。「例の特別措置」とは、「リコンシリエーション＝財政調整法」と呼ばれ、特定の財政案件に絞り、５１－５０で単独強行採決できる「最後の手段」だ。しかし、これを行使すると、今後の議会運営に禍根を残すは必至だ。「結束」は覚束ない。
そこで週末には、民主党、共和党議員８名づつが「ZOOM根回し会議」を行った。
 

ここでは、特に１．９兆ドル案のなかで、最低賃金１５ドル引き上げの箇所が「ふくろ叩き」に遭った。そもそも「最低賃金引上げ」は「雇用者が正規雇用者数を減らす」ので逆効果との指摘が根強い。労働家経済専門家のイエレン次期財務長官でさえ、議会公聴会で反対論を明言していた。州への予算支援も共和党の反対が強い。しかし、その予算抜きで、ワクチン接種地方拡大は望めない。
バイデン大統領の頼みは、「コロナ最優先で結束」との世論の後押しだ。しかし、前途多難である。
 

いっぽう、マーケットは１．９兆ドルを織り込み、更に「インフラ・グリーンエネルギー関連」でも第２弾として兆ドル単位を「おねだり」している状況だ。
筆者の４０年以上のマーケット・キャリアのなかで、これほど国内政治動向が注目され、ニューヨークが政治の都ワシントンから刻々入るニュースに敏感になっていることは初めてである。

 

さて、菅首相の国会答弁が台本マル読み、しかも、喉痛めたとかで、弱弱しく、質問者から「お具合大丈夫ですか」と気遣われるほど。あの自民党寄りの日経でさえ批判的記事。
いっぽう、日本時間今朝生中継で見たバイデン大統領（７８歳）のコロナ関連演説は、プロンプター使っているけど、ところどころ自分の言葉で補い、とにかく具体的。質疑応答で、いじわるな質問にも臆せず答える。４５分ほど語った。
 

今日の原稿は野球関連だったけど、前にも書いたように、先発投手が規定投球回数オーバーして、中継ぎで出てきた投手が、自らピンチを広げつつある感じ。
まぁ、感染者数のグラフは平坦化傾向にあるから、ここで、なんとか、踏ん張って欲しいね。
ここで第三波が終息すると、ちょうど、東京五輪予定時期あたりに、第四波が来そう。日本のワクチン接種は周回遅れだし。