観測記事に振り回された14日日本時間の市場
日本時間14日午前にCNNが流した「バイデンコロナ対策財政投入は約2兆ドル」との観測記事に反応して、株価が急騰した。米10年債利回りも時間外で1.07%から1.11%に急騰した。
そもそも8日発表された雇用統計が14万人減と悪化した後、バイデン氏は、支援策が「兆ドル単位」になると語っていた。
その内容は、追加的個人給付金2000ドル、3月に失効する失業保険上乗せの延長、そして地方自治体への財政支援が期待されている。但し、個人給付金についてトランプ大統領と民主党は賛成に廻り、財政均衡派の共和党は600ドルを主張してきた経緯がある。ブルーウエーブの勢いで2000ドルで行けると瀬踏みしたのか。
そもそもブルーウエーブと言っても、冷静に見れば、下院は222対211まで議席数差が縮小して共和党躍進が目立つ。上院も50対50ということは、一議席でも空席が生じれば、民主党過半数は覚束なくなる。大統領選も選挙戦後半の猛烈な追い込みでトランプ現大統領は7400万票を獲得している。議会乱入という大汚点を残し支持者が徐々に離反してゆくが、弾劾ともなれば、コアのトランプ熱狂的支持者たちは陰謀説のもとに益々結束を固めるであろう。共和党としても、トランプ氏を見捨てることは出来ない。2022年に控える中間選挙も激戦必至だからだ。トランプ氏が「応援演説」に駆り出される州も少なくなかろう。
それゆえ、共和党も2000ドル案に同調すると読んだ可能性はある。
ここでは、バイデン次期大統領と、同じ年の長年の盟友で今や「第三の大統領」とさえ言われるマコーネル共和党上院院内総務との「腹芸」が見逃せない。
なお、株式市場の視点ではバイデン増税も気になるところだ。
結論から言うと、コロナ禍の経済に増税の追い打ちは無理筋だ。バイデン氏は、共和党の増税反対派にも配慮の姿勢を見せ、出来るだけ先送りして、内容も希薄化されそうである。法人増税案もトランプ減税による現行21%から28%への増税を謳ってきたが、25%程度に収めるとの見方も浮上してきた。とはいえ、国外利益への課税の観点からGAFAは狙い撃ちにされそうだ。ここは、ツイッターとフェイスブックによるトランプ氏アカウント全面停止に関する議論と重なり、超党派で受け入れられるところであろう。
総じて、バイデン・リフレ政策と、増税案修正を米国株式市場は織り込み始めている。これは、「いいとこどり相場」というより「バイデン腹芸相場」とでも言えようか。
リスクは、議会両院で僅差の過半数ゆえ、想定外の政治的要因により共和党が相対的に有利になるケースである。
このなかで金市場はおとなしい。とはいえ、中期的にバイデン・リフレ政策の規模が大きくなれば、米国の借金も増えるので、金には買い材料となる。