まさかのブルーウエーブ、金1900-1960の乱高下

筆者の45年のマーケット・キャリアのなかでも初めて見る劇的なネジレ解消を巡る展開であった。ジョージア州の上院2議席のなかで、1議席は日本時間午後4時頃に当確が打たれた。50.6%対49.4%の僅差だ。残る1議席は最後までもつれた。一時は50%対50%とまさに拮抗。その後、ジワリ数千から1万票台の超僅差で民主党候補がリード。残る郡は民主党優勢地域。本稿執筆時点では開票率98%で50.2%対49.8%という段階で日本時間今朝「当確」が打たれた。ブルーウエーブが現実になったのだ。この間の展開は興味ある人はツイッター@jefftoshimaで実況中継したから、それを読むと分かる。
タイム・シリーズで追えば、ジョージア州の数郡の有権者が米国議会のネジレ解消のカギを握る成り行きになった。
バイデン次期大統領もハラハラ見守っているだろう。
トランプ現大統領は「民主党に選挙を再び盗まれるのか」と激高しているのではないか。
首都ワシントンでは、トランプ支持派が議会に乱入。爆発物が発見され、銃で構える人物の姿も見られた。メディアでは「米国民主主義の危機」が叫ばれている。
今回の上院決選投票も、またもや、遺恨試合となるは必至だ。開票作業中に機械故障で1万9千票が手作業で開票されるという一幕もあった。
もはや、米国が、政情不安で議会審議が暴力沙汰になる発展途上国を想起させる。外為市場で米ドル不信任感が強まるのも、むべなるかな。
そこで金は急騰と思いきや、逆に1900ドルまで急落した。バイデン・大型財政支出予測により金利が上昇してドルが買われたのだ。初期反応として、このような動きは想定外であった。とはいえ、中期的に見れば、兆ドル単位の財政大盤振る舞いは、いずれ、財源の問題に転移するは必至。増税か米国債増発か。いずれ米国債格下げ、米国債務上限問題に火がつく。その時点で金利上昇は、良い金利高から悪い金利高に変異する。
更に、米国国内政治的遺恨リスクは残る。国際基軸通貨としての米ドルへの信認は益々低下しよう。これは、外為市場のドル需給によるドル安とは次元が異なる。市場のセンチメント(心理)として米ドル不安感が強まりそうだ。ドル安とドル不安が共振する状況が想定される。
今回のジョージア州上院選挙に当たって実施されたCNNの現地世論調査結果が示唆的だ。
大統領選挙が「不公正」と見る人が41%もいた。「公正」との答えは56%だ。
トランプ現大統領は、次期大統領選挙での「リベンジ」を視野に、「院政」のごとき影響力を保ち、熱狂的支持者を煽り続けることになろう。
マーケットの視点では、実体経済との乖離を指摘される株式市場より、ドル安傾向を強める外為市場のほうが、米国国内混乱を映しているように思える。
トランプ大統領が熱狂的支持者を煽り「議会に行け」とたきつけ、集団が乱入。遂に女性一人の死者を出す事態となったことは、米国への信頼を失墜させた。
金を買うという投資行動は米ドルに対する不信任票なのだ。
この24時間で乱高下はあったが、中期的に金買いの素地は更に堅固になったと言えよう。

 

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