どうなるワクチン相場
18日にファイザー社から安全性に関する発表があった。
8000人の調査対象者の中で強い疲労感が3.8%、強い頭痛が2%。重篤な副作用は認められず。更に、FDA承認には19000人を対象に2か月のモニタリングによる安全性確認が必要とされ、その結果は既に出ているが現在評価中としている。
いっぽう、ファイザー社ワクチンの「有効性」について最終結果も発表された。調査対象の44000人成人ボランティアのなかで170人がコロナの少なくとも一つの症状を発症。そのなかでファイザーワクチン接種者は8人。偽薬接種者は162人で有効確率95%とされた。皮肉なことだが、米国内の感染者急増により、統計的に有意な発症者数データが得られた感もある。
今後の米国でのワクチン開発スケジュールは、まず、12月8-10日に第三者委員会で評価され、緊急承認となる予定だ。年内、2千万人分生産供給を見込む。対象は医療従事者と高齢者。21年に入り、接種対象が一般国民に拡大する。但し、ヒスパニック層や黒人層へのワクチン接種は手間取る可能性がある。政治的に急いだ承認との印象も強く、当初、接種拒否者も少なくなさそうだ。前例ない短期間で全土接種を目指すので、地方病院までの流通ロジスティックスにも難問が待ち受ける。市場の見方としては、全土接種に至るのは早くて4-6月期、7-9月にずれ込むことも視野に入る。
ここでは、マーケット環境が悩ましい。
まず政治空白の中で、政権移行チームは当面動けない。トランプ大統領に引き継ぐ姿勢は見られない。その間、コロナ情勢に好転は望み薄だ。
いっぽう、コロナ危機下で、米国個人保有の現金・貯金の類は1兆ドルを超すと推測されている。潤沢な待機資金を背景に、号砲がかかれば、マネーが一斉に動くことになろう。あるいは、金、株、ドル、国債、原油などの間でセクターローテーションが緩やかなペースで数か月かけて進行するかもしれない。米国人気質として、経済回復の道筋が明確になれば、潜在需要が爆発的に噴出する可能性もある。
バイデン増税という抑制要因もあるが、新政権として、いきなり消費回復の頭を叩くようなことは控えられよう。政策優先順位を下げて、後回しにするシナリオが市場では意識されている。
金価格だがコロナ・プレミアムが300ドル程度上乗せされていると考えられる。コロナなかりせば、金価格は上がっても1600-1700程度であっただろう。
これが剥落したらどうなるか。
残るのは、コロナ有事対応でばら撒かれた、かつてない規模のマネーの量だ。これがマグマの如く沈殿している。実体経済は長期で見れば構造的な低成長。マネーの量は超高成長。通貨価値の希薄化は必至だ。
「刷れるドル・円、刷れない金」の差が鮮明となろう。