金、揺らぐ「中銀は買い手」の前提 新興国が波乱要因

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65361450T21C20A0XQ5000/


↑これは昨日の日経記事です。
公的部門の金購入が8月には単月で売り超過になりました。
コロナ拡散で自国経済が悪化した新興国では、「お宝」の公的金準備も売って凌がねばならない事例はこれからも出るでしょう。
公的部門の金の歴史を遡れば、1990年代から2000年代前半にかけ、毎年400-500トンもの大量の金を売却する売り手でした。リーマンショック以降、マーケットに参加してきた人たちは「中央銀行は金の買い手」と認識しているのですが、それ以前から市場に関わってきた人たちには、「中央銀行の金大量売却」の記憶が依然根強く残っています。フランス、イギリス、スイス、オランダ、ベルギーなど欧州諸国の中央銀行が相次いで数百トン単位で金売却に走ったのでした。金市場は、次に金を売りまくるのはどの国か、疑心暗鬼に陥り、国際金価格はなんと250ドル!まで暴落したのです。国内金価格は1000円を割り込みました。その当時、金を買ったひとたちは、今なら、喜んで金を売るでしょうね。否、売らずに、もっと金を買い増すかもしれません。そういえば、ジム・ロジャーズも金を買い増していましたよ。一時は1000ドルに下がらなければ、金は買い増さない、と言っていましたが、気が変わったようです。このへんの変わり身の早さは、さすが、と思います。
話がそれました。欧州主要中銀の金売却攻勢に危機感を募らせたのが、ほかならぬ中央銀行でした。中銀は巨額の金を保有しているので、金価格が下がっては困るのです。そこで、ワシントン協定とよばれる中銀の金売却に年間の上限を定める自己規制が決定されます。年間500トンという総売却枠が設定されたことで、市場の一定の安心感を取り戻し、250ドルを大底として金価格は今に至るまでの長期上昇過程に入ったわけです。公的部門がいかに重要な位置づけにあるかを示す事例ですね。
そこで、今後の見通しですが、コロナが安定するまでは、金公的購入も年間200-300トン程度に減少すると思います。
新興国は金を買う余裕もないし、逆に売る場合もあるからです。コロナ禍が終息したところで、再び、公的金購入が年間500トンペースくらいに戻ると見ます。
なお、注目は中国。今年はおとなしいですが、中国人民銀行がいずれ公的金準備を5000トンまで増やしてゆくと予測しています。それでも外貨準備に占める割合は5%程度。欧米の60-80%に比し、まだまだ、微々たるものですよ。中国の外貨準備は断トツで世界一ですからね。その多くを米国債で保有しているわけで、これは中国としても気持ちよい状況とは言えません。中国の米ドル離れ、無国籍通貨保有増、というシナリオです。