米コロナ追加財政支援、期限切れ、延長戦入り
欧米コロナ「秋冬の波」が深刻化するなかで、米国の追加財政支援の重要性が高まり、先週来、NY市場の最大変動要因となっているので本欄でも連日、この話題にフォーカスせざるを得ない(内心、食傷気味ではあるが(苦笑))。要人発言が楽観と悲観の間で振れ、市場を揺らす日々が続いている。
日本時間中に新たな展開があると東京市場にも直接的影響をもたらす。
米議会では、2.2兆ドルの民主党案に対し、財政支出に慎重な共和党は1.88超ドルまで歩み寄ってきた。しかし、最後の差が埋まらない。民主党を代表するペロシ下院議長は週末に「48時間以内に決着」との目標を明示したが、その期限にあたる火曜日にも遂に合意には至らなかった。
既に支持率でリードを広げた民主党側は、大統領選挙前に決着せずとも形勢は変わらずと読み、強気の姿勢だ。対する共和党も劣勢のなか、大統領選挙直前に民主党と妥協の姿勢を見せることには抵抗がある。両党とも、選挙前決裂の場合に備え、相手方への責任転嫁の論法に関心が向いている。
市場内では、2兆ドル規模の包括的追加支援策が選挙前に合意するシナリオは非現実的と見ている。しかし、部分的合意ならば可能と読み、既に織り込みつつある。20日のダウ平均も113ドル上昇した。とはいえ一時は400ドル超急騰する局面もあったので、期待感も限定的といえる。金は引き続き1900ドル台で漂流中。引け後にメドウズホワイトハウス報道官がテレビ生出演で「交渉継続」を語ったことで、期限切れでも「延長戦入り」と受け止められている。
なお、部分的合意案の事例としては、共和党が過半数を占める上院で、6500億ドル規模の部分的緊急支援策が議論される予定だ。既に期限切れとなった中小企業の給与支払いを援助するPPP、失業保険給付上乗せ、そして再開する学校への支援などが骨子となっている。失業保険上乗せの第一弾は週600ドル積み増しであったが、今回は300ドルになっている。失業保険給付額がコロナ前収入を上回る事例が問題化したからだ。
この案に対して、ペロシ下院議長は、あくまで包括的支援案を固持している。更に、同氏は、ひっ迫する地方自治体への財政支援や、ウイルス検査・追跡調査の支出も譲れない一線と論じている。
いっぽう、トランプ大統領は、選挙前の起死回生を視野に、民主党案を上回る規模の包括的支援案を提唱しているが、共和党内には、巨額の財政支出を渋る意見が根強い。「トランプ氏の最後の賭け」とも評されるが、市場は「最後のあがき」と受け止めている。
かくして、マーケットでは足元で政争に翻弄されつつ、民主党が大統領選挙と議会両院選挙を制する「ブルーウエイブ=青い波」シナリオの先取りも始めている。バイデン増税リスクより「共和党より規模の大きな」インフラ投資が見込まれることを重視している。インフラ投資は即効性があるが、増税は段階的導入となる可能性もあるからだ。
但し、無視できない2つのリスクがある。
まず、郵便投票混乱による大統領選挙の長期化の可能性。
そして、バイデン氏が勝利した場合、1月20日の大統領就任日まで「空白」が生じること。その間、コロナ感染「冬の波」が急拡散した場合の対応が危ぶまれる。
当初は大統領選挙が終われば「材料出尽くし」となるかとも思ったが、「混とん」も視野に市場は身構えている。