異例の米大統領候補、同時対話集会
今朝は、トランプ候補とバイデン候補が、それぞれ米NBCとABCの全米テレビネットワークで同時刻に市民との対話集会に生出演するという珍しい形式の討論会があった。見るほうも大変だった。二つのスクリーンを並べて、両方同時に視聴したからだ。
トランプ氏はマスク無しの集会を退院復帰後も再開しているので、当然のことながら、ウイルスまき散らしリスクを問われる。相変わらず、トランプ氏は、「感染した人の85%はマスクしていた」など、怪しげな根拠の自説を展開していた。なお、側近のクリス・クリスティー前ニュージャージー州知事(共和党)が陽性になり「マスクしなかったことを反省している」と告白したことも話題になっている。1週間、集中治療室に入ったほど重症化して、かなり懲りたようだ。ホワイトハウスで開催された最高裁新女性判事候補を紹介するイベントで、参加者がマスク無しでハグしたり相互距離を無視した行動をとっていたことが現場写真でも明らかになっている。クリスティー氏も招かれて3列目に居たそうだが「3列目までは全員、ウイルス検査受けているから大丈夫と言われた」そうだ。その本人は、検査受けずに出席していたというからお粗末。いずれにせよ、そのイベントがスーパー・スプレッダー(急速に感染拡大を引き起こす要因)となったことは間違いない。しかし、当のトランプ氏は、そのイベント前日に検査受けたかとの質問に、「記憶にない」と明確な答弁を避けていた。「検査したかもしれない。しなかったかもしれない。君!大統領職は、ホワイトハウスの一室に籠っていては務まらないのだよ!」とまるで答えにならない。今や、欧州で大きな第二波が起こり、米国内でも寒くなって再拡散しつつあるのに、とにかく大統領選挙運動のことしか頭にない様子。
対するバイデン氏は、淡々とトランプ批判を繰り返す。
「トランプ候補は、ウイルスの実態を明らかにせず、楽観論ばかり述べてきた。実態を語ると、株価が暴落するからだ。彼は株価ばかり気にしている」などと語っていた。
マーケットの関心は、バイデン増税案だ。法人税21%から28%へ増税、株式売買益には39%の課税。但し、年収40万ドル(4千万円ほど)以下の個人には増税はしない。要は中間層に厚く所得の再配分という発想なのだが、株には売り材料になる。それで金が買われるか売られるか、蓋を開けてみたいと分からない情勢なので、悩ましい。
基本的にトランプ氏のほうがマーケットには味方になるので、市場関係者の心理も複雑である。奥さんはアンチ・トランプだが、旦那さんは隠れトランプ支持というようなNYの家庭も少なくない。
対話集会では、トランプ支持者、バイデン支持者、そして未決定層と、それぞれの代表が質問に立った。トランプ支持者からは、トランプ氏が登壇すると拍手が沸いていた。まさに分断社会である。選挙結果も、世論調査ではバイデン有利だが、まだまだ蓋を開けてみたいと分からないと感じた次第。更に、それで金が上がるか、下がるか、も当日になってみたいと分からない。特に、接戦になった場合にはトランプ氏が選挙結果にイチャモンつけてホワイトハウスに居座るシナリオも、今日の対話集会を見ていると、無視できないと痛感した。既に、トランプ氏は、事前郵便投票で自分への支持票の多くが「廃棄されている」とゴネ始めているのだ。
この週末も新たな展開があるかもしれず、特に乱発されるトランプ・ツイートから目が離せない。