バフェット氏商社株買いの実相と波紋
バフェット氏は一年前から日本商社株を買い始めていた。かつて訪日の際に、いわき市の企業を訪問したこともある日本に目が行き、日本国内では不人気の商社株のバリューがお目に留まったようだ。
そして、コロナ株暴落が勃発。同氏は安値を拾い損ねたので、今や高値圏になってしまった米国株を今更買えない。しかも、これまで米国株運用に偏っていたので、今や、視点を海外に向けているようだ。日本商社株購入は、その先駆けと言えよう。
コロナ危機では、概ね「動かず」の姿勢を貫いてきたので、今回は久しぶりの本格投資案件である。それゆえ90歳誕生日記念行事の如く、昨日発表に至ったと思われる。
米国内では、コロナ禍で瀕死の米国航空会社を見切り売り、日本の企業に助勢した、との不満も見え隠れする。
それにしても、「バフェット様お買い上げ」のお墨付き効果は凄いと実感している。
昨日は、欧米時間に入ると、この話題が経済メディアでトップ扱いの報道となった。金価格が小動きなので貴金属を売買するトレーダーたちまでが、商社株、日本株一般についての情報を求めてくる。日本の政権交代報道の時に比しても、マーケットの反応が遥かに強い。
但し、NYの大手投資銀行の日本株デスクなど日本企業に詳しいスペシャリストの意見は割れている。日本株投資でなぜ商社株なのか。Eコマースの時代に、総合商社は古いビジネスモデルで、変動の激しい資源価格の影響を受けやすい、など辛口の評価も目立つ。
今回の動きは、「投資会社」としてのバークシャー・ハサウエイが、「投資会社」の色彩を強める総合商社とのシナジー効果を期待した動き、との冷静な見方も根強い。
対照的に、日本株の知見が薄い個人投資家のレベルでは、バフェット氏が買ったのであれば一口乗りたい、とのフォロー派が少なくない。おりから、米国株式市場ではコロナ危機にあたりパパママ投資家たちの参入が話題になっている。彼らにとって、バフェット氏は、まさに「投資の神様」だ。
機関投資家の間では、バフェット氏の購入実績が明示されれば、社内、あるいは年金基金内でも正当化されやすく、買いの抵抗感も薄まる、との安堵の声も聞かれる。
総じて、バフェット効果により、これまで「エキゾチック」というレッテルを貼られ、関心が薄かった日本株セクターが改めて見直されてきた。投資の神様の動きが、日本株にとってゲームチェンジャーになる可能性を秘める。
なお、商社株を過去1年間にわたり「定期的に」買ってきた、という事実は、個人投資家にとって良い教訓となろう。投資の神様でも、株購入は時間軸で分散する所謂「コツコツ」型の投資に徹しているのだ。
しかも超長期投資。コカ・コーラ株を32年、アメリカンエクスプレス株を29年、ムーディーズ株を20年、長期保有し続けている。見習うべき投資スタンスである。
最後に、バフェット氏が日本でもどれだけ注目されているか体感した件。それは昨日のバフェット関連ツイートにアクセスが60万を超えたこと。アイドルならいざ知らず、おっさんツイッターでは記録的数字だった(笑)