金、吹き値売り
昨日の欧米金価格は、瞬間的に1960ドル台まで急騰する局面がありましたが、すかさず1923ドルまで売られ、1930ドル前後で推移の展開でした。
利益確定売りのタイミングを模索しているヘッジファンドが、虎視眈々、狙っている感じです。
市場の材料は、コロナ・治療薬開発。FDA(米国食品医薬品局)がコロナから回復した人の血漿を投与する治療法を特別に認可しました。更に、同局はアストロゼネカが開発中のワクチンも緊急使用許可を検討中です。この報道で、米国SP500株価指数は節目の3400大台を突破。再び過去最高値を更新しています。株高→金安の展開になってきました。今年としては珍しいセオリー通りの動きです。
なお、今週の最大注目イベントはジャクソンホールでの中央銀行フォーラム。例年、ワイオミングのリゾートに世界の中央銀行関係者が集い、主としてアカデミックな観点から金融政策を論じます。今年はバーチャル・フォーラム形式。
珍しく日銀の経験談が注目されています。イールドカーブコントロール、オーバーシュートコミットメント、そして、マイナス金利。日銀が繰り出してきた新型金融政策を世界の中央銀行が注目しているのです。とはいえ、日銀のケースでは結果はイマイチ。かえって、有力な金融政策手段が尽きている印象を与える可能性があります。市場の追加緩和への期待が強い分、失望感を生むかもしれません。これは金にとっても良い話ではありません。
基本的に、日本は、日銀がいくら量的質的緩和政策を進めても、デフレマインドから脱却できない国というレッテルを貼られています。ジャパニフィケーションと呼ばれ、ああはなりたくない、みたいなトーンで語られ筆者もうんざり気味です。それゆえ、日本では「インフレ」といっても、殆どピンときません。インフレの備えとして金が買われている、と言っても、それは欧米の話で日本はデフレだよ、との論調が依然根強いです。しかし、コロナという未曽有の状況に陥り、未曽有の金融緩和を強いられている現在、過去の経験則は当てはまらないと思います。市中に「大放流」されているマネーの量たるや、過去に例をみない規模ですから。中長期的には金の下値を支える要因は変わらないでしょう。
ここにきて、俄か金論者が肯定論、否定論両方で噴出していますね。基本的に金についての知見がない著名アナリストが、頭の中でひねりにひねって、金市場の視点では訳の分からない文章を書いている事例に接することが多くなりました。特に外為関連は、ドル円が膠着して、干上がっているので、なにか、金に事寄せて書くという傾向が見られます。株式市場でも、金建てにすると米国株価は上がっていないとか、金を物差しに使う事例が多く見られます。少々食傷気味ですよ(笑)