金暴落の真の理由とは
金価格の乱高下に手がつけられない状況です。昨日はアジア時間で1860ドル前後まで急落したと思ったら、日本時間午後には一転1930ドル前後まで急反発。その後、NY時間には1950ドル近くまで再上昇したあと、1910ドル程度まで、ダラダラと下げました。そして今朝のアジア時間では再び1940ドル水準まで戻しています。
投機相場としかいいようがありません。金を取り巻く市場環境、経済環境は変わっていないからです。つまり、これまでの金高騰要因が崩れて価格が下がったわけではありません。
要は、これまでの史上最高値であったギリシャ危機時の1923ドルを突破してからは、未知の海域での海図なき航海になったわけで、投機筋にとっては荒しまくりやすい状況なわけです。
ここからは、この程度の乱高下は日常茶飯事と割り切るしかないでしょう。乱高下を繰り返しつつ、価格水準が切り上がってゆく、ということになると思います。
こういうときこそ、金を買うときは、FP流に言えば、購入を時間軸で分散することが重要です。まとめ買いは控え、地味に買い増してゆく、ということに尽きます。
さて、今日は、金暴落の真の理由について考えてみます。それは「実質金利」です。ここからは少々難解な話になります。
名目金利の下落余地が限定的で、且つ、インフレ期待率が上がりにくい状況なので、金の上昇要因として、実質金利の更なる下落を挙げるのは、そろそろ難しくなりそうです。
それゆえ、今回の金暴落のキッカケは、雇用統計発表直後にドル金利が若干ながら上がった、ということでした。ほんの僅かな金利上昇だったのですが、その現象は、その後も数日続くことになりました。
その背景には、兆ドル規模の対コロナ経済政策を賄うために、1兆ドル規模の米国債増発は必至という事情があります。償還期限が近い国債を保有している機関投資家は、一旦、保有国債を売って、新発債に乗り換えることになるでしょう。それゆえ、国債が売られ、利回りが上昇する現象が見られるわけです。
カタッという市場の発する微妙な異音(金利上昇)に、マーケットが異常なまでに反応した理由がここにあります。
ドル金利上昇はドル高要因となることも、金が売られる理由になりました。事実、円高懸念と言われた外為市場で、ドル円は107円近くまで円安ドル高に振れました。
以上が、今回の金暴落の「真相」だと思います。
とはいえ、国債増発は、米国債への信認低下を招きますから、「中長期」的には代替通貨としての金の買い要因となります。同じ金利上昇でも「悪い金利高」の部類に入ることになるので、金利のつかない金にとっても、買い材料になるのです。今は、その前段階と理解できます。この悪い金利高が顕在化するときこそ、金高騰に拍車がかかるときでしょう。
振り返れば、ギリシャ危機で1923ドルの当時史上最高値を更新したとき、南欧諸国の国債利回りは二桁に急上昇していました。
それに対して、今回は、米国債利回りがゼロに近く、欧州国債はマイナス金利が新常態になっています。
こういうゼロ金利時代だからこそ、米国10年債利回りが0.5%から0.6%に上がるだけで、金価格が一気に100ドル以上も「暴落」するという反応を見せるのでしょう。もし、0.6%が1%にでも急騰したら、今の低金利の市場では「うわ、悪い金利急騰だ」と大騒ぎになるかもしれませんよ。金価格が100ドル以上一気に「急騰」することもあり得ると思います。