「預金封鎖」の取材はお断り
昔から金については「陰謀論」が後を絶ちません。典型が「預金封鎖」。今でも、セミナーで「いずれ預金が封鎖されるから金に換えておけ、と言われた。本当に預金封鎖はあるのか」と心配いっぱいの表情で問いかけてくる人が珍しくありません。メディア取材でも「預金封鎖」というトピックだと週刊誌が売れるみたいで、真面目に意見を求められたりします。筆者は、全く取り合わず、取材はお断りしています。
読者を脅して記事を読ませる、という魂胆が透けます。
それ以外にも「金価格は国際大手金融資本が牛耳っている」「FRBが金価格を操作している」というような荒唐無稽のストーリーも人気があるようです。
更に、著名なエコノミストや外交評論家が、金について徹底的に深堀りして、金市場を知る者なら、あり得ないと断定できるような突飛な話を語ることもあります。こちらは普段は極めてマトモな議論をする人たちなので、筆者としては、「そんないい加減な人だったのか」と失望するし、その人が書いてきた様々な文献が信じられなくなります。一夜漬けで知ったように語る、というのは、馬脚を露す結果になるものですね。
先日も、金価格1グラム7000円というところを、1トン7000円と言う事例がありましたが、これなど可愛いものです。株と金が同時に上がる理由について、理屈をこねくり回して、説明して得意顔になっているアナリストもいました。株に高値警戒感を抱き、ヘッジとして金を買っているだけの話なのに、そういう説明では物足りないのですね。日がな一日エクセルシートとにらめっこして、なにか新たな相関関係を発見したかのように興奮している御仁もいました。
一般論ですが、メディアからの投資・経済に関する情報発信が過多になっているとも感じます。相場が動かなくても、一定の紙面を「埋めねばならない」、あるいは、レギュラー番組で決められた放送時間の短縮は出来ない、という事情があるからです。「今日はマーケットに特にイベントもありませんでしたので、資料映像の観光地風景でもご覧ください」などとは、口が裂けても言えませんからね。
逆に、トピックがあり過ぎて、紙面や放送時間が足りないという日もあります。ですから、情報を受け手側も、鵜呑みにせず、取捨選択する姿勢が必要でしょう。
筆者もレギュラーで毎週、毎月の定期連載コラムは出来るだけ持たないようにしています。無理して義務感で書く結果になるケースが少なくないからです。
さて、金価格はさすがに一服状態。先週金曜日の雇用統計が「事前予測より若干良かった」ということでドルが反騰して、金が売られました。これとて雇用統計の結果には評価が割れており、投機筋が膨張したドル売りポジションの手仕舞いに利用した感が否めません。金も一気に2000ドル突破したのでスピード違反気味ゆえ、何らかの調整局面はあって当然だと思います。
なお、その7月雇用統計ですが、「176万人増。前月から鈍化しているが予想上回る伸び」でしたが素直には喜べません。ロックダウン解除で再雇用は増えましたが、コロナウイルス再発で、再び一時帰休に逆戻りの傾向もあります。更に一時帰休が解雇になる事例も増えています。コロナ前に比し、総雇用は未だ1300万人も減少しています。雇用回復は道半ば。結局最後はワクチン開発の進捗頼みなのですね。
それからNY市場の今日の最大注目点は、追加経済支援策。共和党、民主党が議会で折り合わず、週末には、トランプ大統領が「大統領令」で強行突破しました。これは法律的正当性があるのか疑問符がつきますが、株式市場は、とにかく政府からカネが出れば歓迎ゆえ、株高に振れています。大統領選挙控え、両党とも早晩妥協せざるを得ないとの読みもあります。金に関しては、兆ドル単位の
追加経済政策あれば、有事対応で大盤振る舞いせざるを得ないが、最終的には国債増発、あるいは増税となり跳ね返ってくるとの懸念から、「安全資産」としての金は買われることになるでしょう。
さて、日本は異例の自粛お盆休みに入ります。本欄がお休み期間中は、ツイッターjefftoshimaで適宜情報を流します。