2000ドル接近、金価格、大波乱の一日
昨日の国際金スポット価格は、レンジが安値1907ドル、高値1962ドルと大荒れの展開になりました。時系列でみると、アジア時間帯で急騰後、ストンと急落。NY時間帯で持ち直し、結局1950ドル台で推移しています。もちろん、史上最高値更新。投資家の買い意欲を示す日別統計であるSPDR金ETF残高も、28日に9トン急増しています。値下がりしたところは、すかさず買われていることが検証できます。但し、現高値水準では、実需は殆どゼロ。有価証券化されたペーパー・ゴールドが売買されているのが実態です。ここが金高騰の「死角」と言えるでしょう。短期的にはモメンタム(勢い)で投機的に買われている、ということです。投機筋は強気。なにせ、買っては売り、更に、買っては売りを繰り返し、ほぼ全勝してきていますから、この高値圏で買って、仮に梯子を外されても、痛くも痒くもない、という心理でしょう。「勝てば官軍」ですね~ただし、一般個人投資家は一回相場を外すと、沈みっぱなしで、浮き上がれない、という事例が多いですから、プロの真似するのは極めて危険です。プロは経験上、「損切り」つまり、予想に反して下がってしまって損する、という状況に陥っても、冷静に「見切る」ことが出来ます。筆者も、スイス銀行のゴールド・トレーディング部門に配属され、兄貴分の先輩スイス人ディーラーから最初に言い渡されたことは「損切り3年!」でした。よく鰻かば焼き職人さんが見習い弟子時代に「串打ち3年」とか言われていますが、それと同じような感覚ですよ。言葉では表現できない、そしてマニュアルでも教えられない心理的自制「セルフ・コントロール」を自然に体得してきたのがプロということです。
本音では、プロだって嫌ですよ、損切りで売り手仕舞うなんて。やりたくないです。でも、割り切ってできる。明日は明日の風が吹く、と翌日には心機一転、相場に立ち向かえるのです。個人投資家のなかにも、たまに、いますけどね。いわゆる「ツワモノ=強者」が。でも、日本人は特にリスク耐性が弱い。これは民族のDNAだと思います。
説教が長くなりましたが(笑)、アジア時間帯の金価格波乱には、最近売り出し中の中国系ヘッジファンドが関与していると思われます。
なお、マクロで市場を展望すると、注目が株価よりドル安の外為市場に集まっています。今回のドル安は、米国の突出した感染者数が嫌気され、米ドルの売り要因の一つとなっていることが特徴。フロリダ・マーリンズという大リーグ球団で選手の集団感染が起きて公式試合を当面見合わせるという展開になり、これがプロバスケットボールなどスポーツ全般に自粛ムードとなり拡散中です。こういうエピソードが外為市場で米ドル売り材料として語られることは極めて珍しい。その結果、104円台まで円が買われているわけです。但し、「円は低リスク通貨として買われる」という感覚は薄れつつあります。日本でも感染者が急増中なので、「低リスク」とは言い難いわけです。そこで無国籍通貨=金が買われています。とはいえ、その金もやや過熱気味で価格の振れが大きくなってきました。金市場にとって、現価格水準は、未知の海域で、海図なき航海を強いられているのが実態。今後も日中の乱高下は繰り返されると覚悟する必要はあるでしょう。こういうときに、やはり地味ですが「積み立てる」感覚が大事だと思います。
日経の知り合いの女性記者が、以下の記事で実体験として披露していますよ。題して「高値更新の金、25年投資で学んだ続けるヒント」。
コンプライアンスで記者の株売買は禁じられていますが、金は買うことが許されている、という事情もあります。筆者の「助言」も引用されています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61942200X20C20A7I00000/
さてさて、今日もアジア時間帯で、中国人のヘッジファンドが荒しまくるのか注目です。良くも悪くも、中国人は民族的にリスク許容度が高いですね。
なお、以下は産経新聞の金関連記事です。よく纏まっていると思います。
見出し「金、最高値更新中・・・コロナ、金融緩和、米中対立の3要因で騰勢」
https://www.sankei.com/economy/news/200728/ecn2007280025-n1.html