昨日NY市場のテーマは銀行の健全性ということでした。
まず、突発的に、銀行への規制緩和が報道されました。ボルカールールと呼ばれていますが、リーマンショックの教訓で、民間銀行へ国の介入を強める政策です。トランプ大統領の基本方針「規制緩和」に沿った流れと見えますが、突然の発表で株式市場は歓迎しました。
そして引け後。これは予定通りですが、銀行に対するストレステストの結果が公表されました。結論から言うと、当然のことながら、コロナショックの影響は厳しい。事態が流動的なので「再提出」という異例の持越しとなりました。最悪のシナリオだと対象となる33行の融資関連損失が70兆円相当を上回ることになります。それゆえ、銀行の配当や自社株買いが規制されることになりました。但し、個別銀行の査定は「再審査」ということです。市場も未だ消化しかねているところです。

 

米銀行の「金」売買も、ボルカールールの影響で、銀行の姿勢は慎重にならざるを得ませんでした。トレーディングルーム縮小、閉鎖の事例もありました。それが「規制緩和」となれば、再開となるかもしれません。ただ、専門職のトレーダーたちが解雇され散り散りになっているので、トレーディング・チーム再編成も容易ではないでしょう。なお、金より原油売買のほうに、規制は強くかかっています。原油価格は家計を直撃するからです。金価格は、良くも悪くも、庶民生活への直接的影響は薄いということですね。

 

なお、昨日はIMFの警告も市場の話題になりました。経済成長率を厳しく下方修正したのですが、同時に、日米株価も1から100の数値化で100に近い「大幅割高」と断じたのです。「実体経済と株価の遊離」も指摘されました。株式投資家と家計の感覚には相当の遊離がありますね。折から、兜町では日経平均2万円で売る権利(プットオプション)の取引が急増中です。株式投資家がヘッジをかけているのですね。2万円以下への暴落に備え、2万円で売れる権利を今のうちに買っておくという「備え」の防衛行動です。
この株価下落へのヘッジとしては、金買いも当然選択肢に入ってきます。

 

その金価格は、1800ドルに接近したところで、一斉に利益確定売りが出て下落しました。国際スポット金価格が1760ドル台で推移しています。この3日ほどでスポット・ベースでは1740ドル台から1770ドル台のレンジで動いています。NY先物8月ものベースでは1796ドルまでつけていました。通常はスポット価格が指標になりますが、日経はNY先物を指標にしています。今朝の日経朝刊では志田編集委員が金価格2000ドルあるか、との原稿を商品面に載せています。ゴールドマンサックスが最近のレポートで今年の金価格上値を2000ドルに引き上げたことに触発された記事です。この2000ドル議論はギリシャ危機のときも盛んに語られました。結局1900ドル前半で留まりましたが。さて今回は。短期投機マネー主導で動いているので、博打みたいなもので、当たるも八卦当たらぬも八卦。重要なことは、投機買いによる瞬間タッチではなく、維持可能な価格水準がどの程度かということでしょう。私流の言い方では、根雪とドカ雪新雪の違い。実需の裏付けのある価格水準が根雪。無い水準はドカ雪新雪で表層雪崩のリスクあり。今は、投機買いによるドカ雪がたっぷり積もったところ。まだ積もりそう。表層雪崩も、起こるとすれば年末から来年にかけて、というところでしょうか。コロナワクチン開発次第ですね。