27日のNY株式市場は、ダウ平均下げ幅1190ドルもさることながら、日中のボラティリティー(価格変動)が稀に見る激動であった。まずいきなり500超安で寄り付き、900安まで売り込まれ、その後、一転200超安まで買い戻され、引けにかけて1000ドル近い暴落を演じた。VIXも28から37という「危機水準」へ急騰。AIがアルゴリズム取引で売買注文を乱発。人間はあっけにとられ見守るだけの如き状況となった。
注目は金融政策の対応。年3回利下げ説が主流になりつつある。FRBは、米国内感染者数など確認のうえ利下げに踏み切るであろう。もし昨年2回の「保険的利下げ」が無ければ、更なる急激な利下げを強いられたかもしれない。結果的には「予防的利下げ」は正解であった。
但し、ウイルスに揺れる市場で金利政策効果には限界がある。利下げよりワクチン。経済的支援は財政政策への依存度が高まろう。
なお注目される米国内感染者数だが例えば初の「市中感染者」が確認されたカリフォルニア州では33人に陽性反応が出ている。検査キットが200だけなので未だ全貌把握まで時間を要する。当面、アジアからの空路入国者8400人を対象に「経過観察中」だ。特に中国人、韓国人、イラン人のコミュニティーでの集団感染が危惧されている。
27日の株価暴落は、その確認感染者急増を先取りした動きとも読める。
俯瞰すれば、2週間ほど前には米国株式市場は過去最高値を達成していた。その後、短期間で10%を超える急落。相場は絶望で芽生え、悲観で育ち、楽観で成熟して歓喜で終わる、という相場格言がある。まさに今の市場は、歓喜から絶望へ移行の段階だ。次の「芽生え」はいつになるか。感染拡大のピーク次第となりそうだ。
いっぽう、これまで株高を「トランプ政権の経済政策に対する評価」と自賛してきた大統領は、どのように反応するだろうか。27日の記者会見では、株安について聞かれ、「民主党候補とFRBが悪い」と無理筋に責任転嫁していた。米大統領選挙でもコロナウイルスへの対応が重要な論点となりつつある。
なお、債券市場の異音もノイズ・レベルが上がってきた。米10年債利回りは1.26%と連日の過去最低更新中だ。安全資産の範疇では、マネー流入が米国債一極集中の様相である。金は株損失の穴埋めとして益出しの売りが顕著で、相場の頭が重くなっている。リーマンショック直後と同じ反応だ。当時は、益出し売りが一巡してから本格的上昇軌道に乗って初の1000ドル大台突破となった。今後の動きを占う上で参考になる事例だ。
安全通貨としての円も色褪せた。これだけの株暴落であれば、従来なら105円台になっても不思議はないところだ。それが109円台に留まっている。それも、利下げ予測による金利差要因でドルが売られ結果的に円高となっている状況だ。欧米市場で円の安全通貨神話は崩れつつある。
マクロ経済的には1-3月期の米国経済成長率を1%程度と見込む予測が出始めた。27日にはイエレン前FRB議長が「米国経済はコロナウイルスにより景気後退のリスクあり」と発言して注目された。
米中経済共倒れリスクも絵空事とはいえない状況だ。そのなかで、突然の全国休校という欧米市場も驚く緊急対応に踏み切った日本の経済も正念場を迎える。
なお、明日2月29日土曜日、朝9時からの日経プラス10サタデー(BSテレ東)に生出演。おそらく徹夜明け、眠い目をこすりつつ(笑)、コロナウイルスの今後を語ることになりそう。
最近は取材も電話。講演はキャンセル。昨日は感染騒動あった新丸ビル近くでネット対談。個人的には「ずぼら」なので、コロナは気にならず、鈍感。普通に生活している。電車すいているので助かる。今週はこの大荒れ相場でさすがスキーはお預け。明日もテレビ出演でスキーは潰れた。無念。恨コロナ~~