27日日本時間早朝にトランプ大統領はコロナウイルス対策に関する記者会見に臨んだ。
ペンス副大統領を関連政府機関、地方自治体などのまとめ役に指名したが、具体的な対策には言及しなかった。
東京オリンピック開催に関する質問も出たが、「開催されることを望む」と述べるにとどまった。
目立ったのは、民主党批判だ。
コロナウイルス関連臨時予算をトランプ大統領は25億ドルと提示したのに対し、民主党は85億ドル必要としている。
株価下落に質問が及ぶと、民主党候補発言も要因と語った。市場は超党派で対処すべき問題が、大統領選挙の対立候補批判の材料にされていることにリスクを感じている。
政府内の不協和音も指摘される。
特にCDC(疫病予防管理センター)が、米国への転移を「不可避」と語り、株価続落の引き金になったことに、強い不満を示したとも伝えられた。
皮肉なことに、記者会見後、CDCは、カリフォルニア州で米国内発の感染経路不明の患者確認を発表した。
既に、NY郊外のナッソー郡では、83名の感染が疑われ、検査中とされる。
この報道をキッカケに26日のNY市場では、前日比461ドル高まで反騰していたダウ平均株価が下落に転じ、結局123ドル安で引けている。
高く持ち上げられた後に落とされる如き感覚が株価下落を加速させた。


新たに結成されたペンス副大統領が指揮する対策チームが直面する問題は山積状態だ。
特に、感染検査キットが不完全で、全てCDC経由で確認されるので、検査件数が一日50から100程度に留まっている。
カリフォルニア州の事例も、「たまたま診察で見つかった」ケースだ。
検査件数が少ないので、潜在的には多い可能性が危惧される。
感染対応問題は、日本と酷似しており、今後の展開は予断を許さない。


27日トランプ記者会見後にダウ平均先物が時間外取引で三桁の下落となったことが示唆的である。
中国以外の感染者増加数が中国を初めて上回ってきたことも注目されている。
中国発表の数字は基準が変わることがあるので信頼性に欠けるものの、マーケットの関心は、欧米への転移にシフトしてきた。
債券市場では米国10年債利回り下落に歯止めがかからず、二日連続で過去最低水準を更新している。
この債券市場が発する異音が、世界的経済減速、更に景気後退の議論を誘発する。


なお、日本の株価が27日に「下げ渋った」要因として、「二頭の鯨」即ち日銀とGPIFの買いの噂が欧米市場では話題になった。
ユニクロの主要株主が日銀ということも「不思議の国のアリス」と語られている。
「円は安全通貨」との見方も徐々に色あせてきた。
コロナウイルス関連では過去の市況の法則が通用しない事例が多い。
NY市場では、売り手の多くが、売らねば顧客に叱咤される立場にあるプロたちだ。
市況の法則で解説できなくても、とにかくリスクを減らすために売るという傾向が顕著である。
調整局面入りのNY金も1,650ドル前後までジワリ買い戻されている。