外務省が、新型肺炎の感染拡大を受け、中国に滞在したり渡航を予定している日本人に向け、一時帰国や渡航延期を「至急検討」するように呼びかけています。
「至急」という切迫感ある単語を使うことは異例ですね。
私も他人事ではありません。
中国は世界最大の金の需要国でもあり生産国でもあります。
上海の金取引所創設のときにアドバイザーとして招聘されたことが縁で、中国の銀行のアドバイザリーを長年務めてきました。
その間、日中関係悪化で縁遠くなった時期もありましたが、ウイルス感染問題で行き来できなくなる、と言う事態は全くの想定外です。
このコロナウイルスという妖怪は、多くの医療専門家がいずれ終息と語るものの、何せ症例が手元に限られているので、今後の展開について「大丈夫!」と言い切れません。
3月終息説が5月終息説になり7月終息説にまで発展すると、オリンピックにも重大な影響を与えるは必至でしょう。
マクロ経済的にも、中国GDPが0.2-0.3%減速するという見通しから、最近は今年の中国GDPが0%から1%になるという懸念が真面目に語られるようになっています。
正体不明の妖怪に対して、地域封じ込めなどの施策が強制的に実行されるので、実態経済への影響が甚大になるわけです。
ところが、マーケットは反応薄。楽観的なのか。
昨晩は、パウエルFRB議長の米国議会証言というイベントがありました。
被告席みたいなところに座らされ、2時間以上も、議員が入れ替わり立ち替わり、持ち時間5分で、質問を投げかけるという設定です。
やはり話題はコロナウイルス。パウエル議長は中国経済の影響が米国に波及するか注視していると述べ、懸念を明示しました。
これでマーケットは安堵したのです。
米国経済に禍が及ぶ事態になれば、FRBが利下げ、あるいは、FRB資産拡大などの金融緩和で救いの手を出してくれる、との期待です。
それゆえ、「当面は」株が下がりにくく、金は上げにくい。要は動きにくい、ということです。
相変わらずの中央銀行頼み、緩和依存症が透けますね。
正直、あまり今の相場をまともに見る気になりません。
動いているのはCTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)などの超短期投機筋ですから。
まともな投資家はコロナウイルスの行方を見極める姿勢です。
ちなみに、テスラ社の株価が一日で20%も暴騰したりしましたが、その結果、空売り投機筋(ヘッジファンド)の損失が円換算で1兆円近い、という推計をWSJが報じていました。
1兆円の大博打!
かと思えば、中国でも人気のスポーツ・ブランド、アンダーアーマーの株価が昨日は一日で18%も暴落。
典型的なウイルス懸念による販売急減ですね。
なお、トランプ大統領は「議会でのパウエル証言は始まったときのダウ平均は125ドル高だったが、終わったら20ドル高だった」と、相変わらずパウエル批判を繰り返しています。
米国大統領選挙はニューハンプシャーでサンダース候補勝利。
私は、民主党候補が誰になってもトランプには勝てないと思っています。
トランプの濃いキャラに勝てる候補が見当たりません。