NYから見れば、日本は「中国周辺近隣国」である。
新型肺炎による旅行制限などの経済的影響の第一波をまともに受ける国と見なされる。
それゆえ、日本株を保有する外国人投資家は心中穏やかならない。
東京オリンピック開催問題も、これまではテール・リスク扱いであったが、フィリピンで死者などの報道を機に「リスク・シナリオ」に「格上げ」されてきた。
あくまでメイン・シナリオは「開催」である。
開催に影響が出た場合の日本株への影響について「ずばり日経平均は2万円割れか」等の質問が筆者のところにも寄せられている。
1月31日のダウ平均が603ドル安の急落を演じたことも、不安感を増幅させた。
デルタ・アメリカン両航空会社が中国発着全便の運行停止の発表が下げのキッカケであった。
1月シカゴPMIが事前予測48.9を大きく下振れして42.9まで下がったことも注目された。
米中通商「第一段階」合意後も、景況感が好転するどころか悪化しているとの印象を市場に与えた。
ゴールドマン・サックスが新型肺炎の影響で1-3月期中国GDPが0.4%下がるとの見通しを発表したことも要因とされた。
更に、2月3日のアイオワ民主党党員集会で反ウオール街の急進派バーニー・サンダーズ候補が支持率予測トップに躍り出たことも売り材料となった。
投資家行動としては、上海株式市場再開前に、ポジションは整理して、乱気流に備える動きも顕著であった。。
31日の引けにかけては、米国疫病予防管理センター(CDC)の記者会見が同時進行となり、「現時点での米国へのリスクは低い」との発言が一定の安堵感を与えた。
前日比670超安まで下がっていたダウも結局603ドル安で一日の取り引きを終えたのだ。
上海株式市場再開も不安視された。
既に先週の欧米市場で中国関連ETFが8%程度急落していた。
本日の上海株の下げ幅も8%程度ならば、想定内とされそうだ。
ヘッジファンドのなかには、「上海株急落の噂で売り、ニュースで買い戻す」動きも見られる。
中国当局も「国家隊」総動員で、上海株を買い支えているとの観測が根強い。
なりふり構わず追加的金融財政政策も発動されよう。
既に中国人民銀行は1.2兆元もの大規模で緊急流動性投入を発表した。
更なる投入も厭わぬ姿勢だ。
あれだけ強力に推進したデレバレッジ(債務削減)も、一転、引き締めの手を緩めている。
社債のデフォルトが2019年には過去最大の水準に達していたが、当面は政府救済を優先せざるを得まい。
サプライチェーン破断の影響をもろに受ける民間企業のドル建て債務も人民元安・ドル高の影響を受ける。
地方政府のインフラ投資も不動産バブルの元凶として抑制してきたが、ここにきて、地方政府の別働部隊ともいえる融資平台経由の投資事業増加を容認の姿勢に転じている。
この政策総動員により2020年中国経済成長率の急落も回避される可能性がある。
しかし、そのツケは2021年以降に廻ってくるは必至だ。民間のモラルハザードも再燃しよう。
そもそも中国人個人投資家の間には、投資の損は政府が救済してくれる、との甘い期待が未だに根強い。
更に、米中通商「第一段階」合意による、米国製品購入、知的財産権保護・技術強制移転取り締まりの厳格化も当面「棚上げ」となるシナリオも無視できない。
習近平国家主席は、新型肺炎を「悪魔」と断じ、中国共産党の威信をかけた「闘争」を宣言した。経済や株価より「悪魔」撲滅を優先する構えである。
今後、新型ウイルス拡散が更に進めば、救済措置の限界も市場では意識されよう。
米中通商交渉も、「休戦」がどこまで維持できるか、不透明となっている。
疲弊する中国経済は、トランプ大統領の最大の「武器」である関税の威力を更に高めよう。
先が読めない疫病リスクによる世界株安連鎖リスクをマーケットは当面傍観を余儀なくされている。
なお、NY金は本日上海株式市場再開、上海株8%安で8ドルほど下げているが1,580ドル台の高水準にある。
上海株が暴落すると保有金まで現金化される可能性と、中国の金実需が減少するリスクが意識されている。
今日の写真は朝日まばゆい早朝のゲレンデ。これがスキーの醍醐味。