先週金曜の時点では、欧米市場はWTO緊急事態発動見送りにより、ヘッジファンドも模様眺めを決め込んでいた。
NY株式市場も買い手不在のなかでダウ平均がズルズルと170ドル安まで下落した。金価格はレンジ上限にじり高。
多くのファンドは週末、新型肺炎関連の展開を見守る姿勢であった。
そして、週末。事態は悪化。


習近平政権も、全人代を3月5日に控え、なりふりかまわぬ強権的封じ込めに動いた。
その結果、週明け東京市場がヘッジファンドの株売り、円買いの仕掛けをまともに受ける展開となっている。
その影響で金価格は1,580ドルの大台を回復している。米中通商協議「第一段階」合意を受け暫時安堵感に浸っていた市場は、不意を突かれた。
つい3週間ほど前には「2020年年初予測」のなかで全く想定されていなかった事態である。
しかも、新型肺炎に対する地方政府の後手後手にまわる対応は、習近平強権体制の弱点を露わにした。
武漢市では全国の地方政府幹部集会が1月7-17日に開催されていた。
そこで地方当局が冷静を装い公表が遅れたとの指摘もある。
市内の病院には、「感染ゼロ」の「目標」が下知され、「未達」だと病院事務長が解雇される懸念もあり、看護師たちが感染事例報告をためらったとの報道も市場には流れている。
今回ばかりは、習近平政権も、「外国分子による陰謀」などに責任転嫁は出来ず、もっぱら地方政府の医療関係者などを見せしめ的に吊るし上げているとの見方も市場の不安感を誘発する。
香港、台湾に加え、新たな問題を背負い込んだ習近平氏は、米中通商交渉に関しても、国内向けに弱腰は見せられない。
トランプ大統領はお見舞いのメッセージを寄せているが、通商交渉面では「オウンゴール」を得たと言えよう。
中国経済も「コロナ・ショック」の影響が拡散しそうだ。
特に企業面では、新型肺炎による直接的損害で財務体質は更に弱まることになる。


そもそも、米中「第一段階」で合意したとされる「知的財産権保護」「技術強制移転」への対応が、現行より厳格化されれば、多くの中国中小企業はたちまち立ち行かなくなる。
合意事項の履行検証のために設置される「仲裁機関」にも、処理能力を超える「違反疑惑」件数が持ち込まれることになろう。
更に追い打ちをかけるように、個人消費が萎えるは必定。
特に、春節期間の「実質的引き延ばし」は中国GDPに直接的な影響を与える。
このような経済環境で、米株価は過去最高水準にあり、高値警戒感が強い。
ヘッジファンドにとっては、新型肺炎は、格好の利益確定の口実となった感がある。
今週は、米株式市場ではアップルなど主要企業の決算が目白押しだ。
1月28-29日にはFOMCが開催される。金市場にも重要なイベントだ。
ボラティリティの高まりに市場は身構えている。