米国の企業債務が15兆ドル(約1,700兆円)に達した。
パウエルFRB議長も「経済が減速すると高水準の債務が借り手を圧迫する可能性あり」と警告を発している。
2000年代の住宅バブルと比べ規模は小さいが、信用収縮(クレジット・クランチ)の火種となるリスクを孕む。
パウエル議長は「サブプライムの再来だ、という人から、心配する必要はない、という人までいるが、真相はその中間にありそうだ」「多くの専門家は近年の企業債務の積み上がりには既視感があるとみている」とも述べている。
具体的な事例としては、CLO(ローン担保証券)が挙げられる。
CLOはレバレッジド・ローンという信用力の低い企業向けの融資を束ねて証券化したものだ。
リーマン・ショックに火をつけたのは、低所得者への住宅ローンを束ねた証券化商品であるCDO(債務担保証券)だった。
米国景気の拡大は10年近くに及び、債務不履行に陥った企業は少ないので、投資家は債務不履行リスクを軽視しがちだ。
その結果、余剰マネーが信用力の低い企業に向かう。レバレッジド・ローンは最近、四半期に400億ドルのペースで増え続けている。
いっぽう、米国の家計部門の債務残高も13兆ドル(約1,500兆円)を超える。
内訳は、なんといっても住宅ローンが約9兆ドル。
クレジットカードのローン残高が8,600億ドル。30日以上の延滞比率も上昇傾向だ。
学生ローン残高は1.5兆ドル。
自動車ローンが1,3兆ドル。
そして、米国の公的債務残高は23兆ドル。
これだけの債務を抱えると、普通なら、債券市場が異音を発して市場に警鐘を鳴らすものだ。
これを英語で称してbond vigilante(債券自警団)と言う。
極端な例だが、ギリシャ危機のときは、ギリシャ10年国債の利回りが年率30%水準に跳ね上がった。
財政不安定の国に10年、カネを貸すなら、金利は30%くらい貰わないと割に合わない、ということだ。
アルゼンチンも債務不履行常習国だが、今年8月には、米ドル建て同国国債の利回りが年率50%水準に、現地通貨建て国債に至っては80%超まで急騰した。
これらは例外的なケースとしても、経済が悪化すれば、発券国の国債が売られ、その利回りは上昇するものだ。通常であれば。
しかし、今はどうやら、通常ではないらしい。
赤字まみれの国アメリカが発行する10年国債の利回りは1.8%程度。
あのギリシャの10年債利回りが、なんとなんと、1.5%という低さなのだ。
欧州はマイナス金利が当たり前なので、プラス金利なら、その国の財政経済は要注意ということのようだ。
このような市場環境だと、米国10年債の1.8%もプラス金利ということで投資家に買われるのだ。
借金だらけの国が発行した国債が「安全資産」と見なされるのも、おかしな話ではある。
私に言わせれば、米10年債購入に向かうマネーは、「安全性への逃避」ではなく「流動性への逃避」ということだろう。
米国債は市場規模がダントツでデカいので、経済ショックが起こっても、いつでも売り手・買い手が見つかる、という安心感だ。
とにかく、このような世界的低金利状態では、債券自警団の役割が果たせていない。
異音が聞こえず、マーケットは危機感を感じず楽観的になりがちだ。
米国株価は史上最高値更新。株式市場でも異音は聞こえていないようだ。
話は長くなったが、このような異常な状況の中、金は「誰の債務でもない」資産なので、債務不履行リスクがゼロ。これがメリットとして注目される。
なお、明日11月21日のBSジャパン、日経プラス10に生出演予定。
お題は「米国経済の死角」とかなんとか。通常午後10時からの番組だが、この日は10時半から。私の出番は午後11時前くらいかな。
そして、今日の写真は、もう出回ってきた冬の味、タラの白子(タチ)。
見るからにプリプリで綺麗。軽く熱を通し、食すると、ムースみたいなクリーミーな食感と味。
旨い!誠鮨@御茶ノ水。
日経の「交遊抄」に(2回目に)出たときに紹介した店。
御徒町地区の大手宝飾会社系列。
今人気上昇中の「朝乃山」も付き人たち連れで、よく見かける。
酒を飲まず、ウーロン茶の2リットル・ボトルをグイグイ飲み干しているのが好感持てる(笑)