金を買うという投資行動は、米ドルへの不信任投票といえる。
金高騰の背景には、ドル発券国、米国の経済への根強い不信感があるのだ。
米国経済は基本的に赤字だらけ。国民性も貯蓄より消費を先行させる。
公的部門では、財政赤字と経常赤字の所謂「双子の赤字」が懸念されて久しい。
財政赤字は単年で1兆ドルの大台を突破している。
トランプ大型減税に加えて、空港などインフラ財政支出をばら撒くのだから、当然の結果ではある。
貿易収支赤字減らしは、周知の如く、トランプが最大の政策目標に掲げているが、減税効果で個人の輸入品消費が増える成り行きとなっている。
いっぽう、民間部門では、企業と家計の両部門が負債の山を抱えている。
まず、企業は、異常な低金利現象を資金調達のチャンスと捉え、超低金利での社債発行ラッシュを演じている。
今年9月には、米国だけで18兆円相当の社債が発行された。ディズニー、アップル、キャタピラーなど大手企業の発行体が並ぶ。
ディズニーの例だと、30年という長期債を年率3%前後で7,000億円以上、調達した。問題はその使い道だ。
多くの米企業は、米中貿易戦争の煽りで先が読めず、生産性を上げるための設備投資に踏み切れない。
調達したマネーを、投機的M&A、あるいは、マネーゲームに使っている。
これは危ない兆候だ。
ちなみに、これほど巨額発行される社債を投資家は喜んで買っている。世界的に国債はゼロ金利かマイナス金利が当たり前。
そのなかで米国債は少なくともプラスで1-2%の利回りが得られる。投資適格の社債ならば、米国債の利回りプラス1%程度のリターンを得られるので決して悪くない話となるのだ。
マネーが米国に集中するのも当たり前だが、問題は、今後の米国経済が景気循環の中で景気後退に陥った場合だ。
潜在経済成長率が大幅に低下して、企業の稼ぐ力が衰えているので、発行した社債の重みがずっしり企業財務に負担となる可能性がある。
更に、個人の家計部門でも、あのサブプライム・リーマンショックを引き起こした低所得者向け住宅ローンが、またもや、くすぶっているのだ。
2020年は米大統領選挙の年。
そこで、特に所得水準が低い黒人家庭向けにも住宅ローンを提供することで「マイホーム取得」の夢を叶えさせてあげよう、との国民迎合的な動きが顕在化してきた。
具体的には住宅ローンを提供する金融機関の融資基準を緩めているのだ。
ここは、サブプライム危機の教訓で、特に厳格化したところなのだが、喉元過ぎればなんとやら。票稼ぎのお題目で、またぞろ蘇ってきた。
クレジットカードの債務残高も昨年は過去最高の1兆ドルの大台に乗り、サブプライム・金融危機時の水準を上回った。
1世帯当たりのカード債務残高は8,390ドル。ほぼ100万円の大台に近い水準だ。
カード債務残高の全米平均が1万ドルを超えるとデフォルト(債務不履行)が急激に増加する可能性が指摘されている。
そうなれば、銀行による信用供与の引き締めが、個人消費に打撃を与えるは必至だ。この関連で市場の話題は、アマゾンが導入した低所得・低信用の個人向けカードだ。
これまでクレジットカードを持ったことが無い人やデフォルトを起こしてカードの再発行が出来なくなった人たちを特に対象にしている。
アマゾンのターゲットは、ミレニアル世代と言われる23-38歳の若い世代だ。
この世代の8割は買い物がネット中心だが、学生ローンの返済に苦しみ、所得も低く、まともにクレジットカードを作ることが出来ない人が多い。
このターゲットに向け、最長24か月までの分割払い(金利無し)を提供。
但し、分割払いが完了できないと、さかのぼって延滞金利が年率28%課される。
なお、ここで言及した学生ローンの残高も1.5兆ドルを超え危機的とされる。
大学の授業料は1980年代の倍以上に跳ね上がり、特にミレニアル世代が、その返済に苦しみ、結婚、マイホーム購入、子作りもままならず、という状況となり、大統領選挙でも支援策が挙げられ、民主党のエリザベス・ウォーレン候補は既存の学生ローン債務を免除して、大学無償化を提案している。
その財源は、富裕層への増税で賄う。
かくして、米国は公的・民間両部門で借金漬けとなり、国際基軸通貨としての信認が問われ、その「不信任投票」として金が買われているわけだ。
金を通して世界を読むと、実に奥が深い。
さて、今日の写真は、ゴルフ@沖縄~~~!
11月は、晴天が多く、気温も20度前後で、12-2月のハイシーズン・ピークより安く、地元の人に言わせれば、ベストのシーズンなのだそう。
サンゴ礁の海に向かってのティーショットも爽快だったよ~~!