いよいよ注目のFOMC声明文とFRB最新経済見通しが日本時間今日深夜に発表され、パウエル議長は記者会見に臨む。
その前日に、NY短期金融市場では、銀行間取引の短期金利がリーマンショック以来とされる急騰を演じた。市場は「すわ、クレジット・クランチ(信用収縮)か」と色めきたった。
しかし、実態は、法人税の納付日などの理由で想定以上の資金需要が生じたことが原因とされる。そうであれば、企業業績が意外に持ち直し法人税納入が急増とも読める。「金融ショック」どころか経済の「吉兆」となる可能性を秘めるのだ。
しかし、マーケットは企業業績伸び悩みを織り込んで、利下げを想定しているので、「良いニュース」を素直に歓迎できない状況にある。
FRB経済見通しも、「ほどほどに悪い」予測を望む。極度な悲観は困るが、楽観論は10月以降の利下げ見通しを危うくするからだ。
なんとも「わがまま」な市場ゆえ、パウエル議長の一言一句で大きく振れがちだ。
今回最大の注目キーワードは「中盤の調整=mid cycle adjustment」。
前回のFOMC後記者会見で唐突にパウエル議長が使い、市場が混乱した、といういわくつきの「新語」である。パウエル氏は、記者会見で補足して「長期的利下げサイクルの始まりではない」と更に踏み込んで発言した。
しかし、その発言の直後に、トランプ大統領による対中追加関税電撃発表があり、市場環境は一変した。
直近では、その通商摩擦懸念は若干後退したが、直前になって、サウジ発新たな地政学的リスクが勃発した。
それでも、今回、パウエル議長は今回予想される0.25%の利下げを「中盤の調整」で片づけるのか。
市場は、今後も3-4回は利下げが継続される、と期待を込め読んでいる。
FOMC内の亀裂も懸念材料だ。
前回は二名の「利下げ反対者」が議事録でも明記された。
更に、地区連銀総裁たちの論客が、エコノミスト出身ではないパウエル議長に利下げ賛成・反対の様々な議論をぶつけている。前回のFRB経済見通しの所謂ドット・チャート(FOMC参加者の金利見通し分布)では、年内利下げ予測について意見がほぼ二分されていた。
今回もその分裂傾向が再現されると、市場には混乱要因となろう。マーケットの視線は、既に10月以降のFOMCに向いている。
気になる市場の反応だが、想定通り利下げが決定された場合に、ドル高・円安に振れる可能性が注視されている。
実は、市場は、その思わぬ予告編をサウジ原油施設爆破後の外為市場で見ている。リスクオフの円高にはならず結局108円台が維持されたからだ。日本は原油消費国、米国は今や最大級の原油生産国という差が意識され、米国経済の底堅さが「買われた」とされる。
利下げについても、金融緩和により、米国経済改善が見込まれれば、ドル高の展開となっても不思議はない。市場内部要因を見ても、積み上がった投機的円買いポジションが調整局面を迎えている。これこそ長期円高傾向のなかで「中盤の調整」とも読める。
外為市場では「安全通貨」第一位の座をドルと円が競っている。
僅差の戦いゆえ、パウエル議長の一言で、順位が動く可能性があるのだ。
そして国際金価格だが、最近はドル高でもNY金高という事例が見られる。ドルも金も安全資産と見なされているからだ。
FRBが利下げを継続と明言すれば、金利を生まない金に追い風となろう。
パウエル発言には要注意だ。利下げをためらえば、金には売り要因となる。
流れとしては1500ドルをなんとか維持できているので、重要な分岐点だ。