香港情勢とブレクジットに市場の不安が募り、国際金価格は1,550ドルの「危機ライン」を試す展開になっていた。
超短期投機筋も、このラインを本格的に上抜ければ、一気に1,700ドルも視野に入るので、派手な「空中戦」を繰り広げていた。
そこに米中貿易協議先送りながら再開の報道が飛び込み、潮目が急激に変わった。
24時間価格グラフで見ると、崖から落ちる如く、1,510ドル台まで暴落したのだ。
債券市場でも、米10年債利回りが前日1.45%から1.56%に、同2年債が1.42%から1.53%にまで急騰した。
数年ぶりとされる上げ幅だ。金利を生まない金にとって金利急騰は天敵である。
注目のイールド格差も僅差ながらプラス圏にとどまった。ドイツ30年債利回りがマイナス圏からプラス圏に転じたことがニュースになる。
そもそも、金市場での空中戦の当事者たちも8月の急騰に高値警戒感を抱いていた。
ゴールド・パーティーが華やかに開催されているので、お相伴に預かるべくパーティーには参加する。
但し、いつ何時「中締め」の挨拶が始まるやもしれず、会場では出口に近い場所に陣取る、とも語られた。
その「中締め」の一報が、まず、中国から届いたのだ。
そして米国側も協議再開を追認。
但し、中国側は「10月始めにワシントン訪問」と具体的な時期に言及したが、米国側は、まず副閣僚級、そして閣僚流会談と段階的に数週間かけて進めてゆく、とやや控えめな論調だ。
中国政府系新聞は「とても良いことが起きる」と囃している。
中国側が、国慶節期間中は米中経済摩擦不安を払拭したいとの本音が透ける。
しかし、金市場も含め、マーケット全体を見渡しても、米中接近を
本気で歓迎できるほどの楽観論は見られない。
これまでに協議再開、協議中断を何度経験したことか。
「またか」との疑念が根強い。
結局、5日のマーケットの動きは、一部超短期筋のポジション手仕舞いに尽きる。
株売り、債券買い、ドル・円買い、金買いが一斉に巻き戻された。
これまでドカ雪のごとく市場に積み上がったこれらのポジションが、米中協議再開の「音」で表層雪崩を引き起こしたのだ。
新雪が流され、地肌が見えたところで、また同じ投機的動きの第二波が発生する可能性には要注意だ。
米中協議にしても、例えば、中国が望むファーウェイの禁輸緩和をトランプ大統領は「切り札」として温存するであろう。
そしてワイルドカードは香港だ。依然、一触即発の緊迫感が漂う。
筆者は、結局、国慶節という期間限定の米中停戦と読んでいる。
「中国は次期米政権との取引を待ち望んでいる。私が(選挙に)勝てば、合意するのはさらに難しくなる」とのトランプ大統領の基本的認識は変わらない。
5日発表のISMサービス業景況感指数が56.4と改善。ADP民間雇用統計も19万5千人増と好調。ダウは372ドル急騰。トランプ氏が対中強硬になれる市場環境だ。
建国70周年記念活動に雑音は発せずとの「武士の情け」と、「香港カード」をちらつかせ、「友人」習近平氏に貸しを作る、というトランプ流の取引が連想される。
「結局、何も変わっていない」
NYのヘッジファンド・マネージャーの呟きが、市場心理の底流を物語る。
 

さて、今日は筆者近影。
ヘアスタイルが「たまねぎ男」かと噂されているよ(爆!)

 

豊島氏近影

それから、今週発売の週刊エコノミスト誌14ページに米国金融政策について寄稿。読んでみてね。