先週15日にウォールマートが予想上回る好決算を発表するや、トランプ氏はすかさず称賛のツイートを書き込んだ。
「米国動向を示す偉大な存在のウォールマートが、素晴らしい(決算)数字を発表した。我が国は、他国と違い、絶好調なのだ。」
16日には、8月のミシガン大学消費者マインド指数速報値が前月の98.2から92.1と7か月ぶりの水準に落ち込んだ。
すかさず記者団との一問一答で問われると「消費はとても良い」と反論した。
いっぽうで、トランプ氏は、FRB批判をエスカレートさせ、パウエルFRB議長を名指しで利下げ圧力を強める。
ここに、トランプ氏のかかえるジレンマが露わになる。
GDPのなかで最大項目の「消費」が強ければ、9月0.5%の利下げなど正当化できない。
米中貿易協議については「もし進展なら株価は上がるだろうが、未だ、(中国側の要求を)受け入れる準備はない」と記者団に語っている。
苦しい釈明である。
株価を政権の通信簿と位置づけてきた手前、弱気の見通しは語れない。とはいえ、中国に対して安易な妥協の姿勢も見せられない。
更に、長短金利逆転現象について質問されると「不況の前兆といっても、2年ほど先の話だろう」と答えた。
来年の大統領選挙まで米国経済は持ちこたえれば良し、との本音が透ける。
米主要経済紙は、トランプ氏がホワイトハウスに閉じこもり相場モニター画面に釘付けになり、株価が急落すると、経済顧問たちに「なぜだ!」と問い詰めると報道している。
その経済司令塔であるクドロー国家経済会議委員長は、18日、日曜の長寿報道番組に生出演して、「楽観論を恐れるな」と繰り返し強調した。市場が経済に楽観的になると、利下げ見通しが後退して、株が売られることに釘をさす発言と見られる。
更に、先週は、トランプ氏が株急落で、米国大手3銀行トップと電話で意見交換したことも明らかになった。
議論は米経済、個人消費そして金融政策に及んだという。
その金融政策を掌る世界の中央銀行首脳たちが、今週はワイオミング州の避暑地に集う。
恒例のジャクソンホール・シンポジウム開催だ。今週の市場の最大関心事にもなっている。
今年のテーマは「金融政策への挑戦」。
トランプ氏はECBドラギ総裁も名指しでユーロ安誘導と批判しており、まさに金融政策へ挑戦的言動を繰り返す。
おりから、MMT議論も市場では沸いている。
ジム・ロジャーズ氏などは、筋金入りの「FRB不要論者」だ。
それは極論にしても、FRBへの不信感は市場に根強い。
イエレン時代と異なり、金融政策の次の一手が読めないからである。
そもそもパウエル氏自ら、「金融政策は暗闇を手探りで歩くようなもの」と語るほどだ。
ドルの代替通貨とされる金の高騰も、米金融政策への不信を映す現象である。
金を買うという投資行動は、米ドルへの不信任投票なのだ。
トランプ氏は「米ドルはパワフル(力強い)だが、他国が通貨安誘導するのは不公平だ。」と語る。
米利下げにも関わらず、ドルインデックスは98の大台を超え、対円を除き、趨勢はドル高基調だ。
しかし、基軸通貨ドルへの信認は薄れている。
金利差を追う投資家はドルを買うが金も買う。
「市況の法則」に反する現象だが、決して安心して長期にドルを保有するわけではないのだ。
ヘッジファンドはドル買いに走るが、世界の中央銀行の間では、外貨準備としてのドルを売って金への乗り換えが目立つ。
トランプ氏の解説に、市場は納得できず、疑心暗鬼を募らせ、その結果、ボラティリティだけが高い状況が続きそうだ。
さて、今日は、付け焼刃の一夜漬け知識は、すぐ、ばれるという話。
過日、著名な外交評論家とテレビ出演で一緒になり、その人が番組本番で曰く。
「米国は着々と金を貯め込み、金による世界制覇を目論んでいる」(ちょっと、とんでも本の読みすぎじゃない??苦笑)
そして、某中国評論家は「米国は金を独り占めにすることにより中国とのパワーバランスを有利にしようと動いている」(こういう人たちって、本に書かれたいい加減なことを、簡単に鵜呑みにしてしまうのかね)
私は両名ともまともな人と思っていたのだけど、この事例を見せつけられ、この人たちが語る他の事柄も信じられなくなった。
ちなみに、両名とも私を金専門家とは認識していなかった(笑)
番組後、控室で、私が(誤りを指摘せず、事実だけ)金について説明すると、黙りこくってしまったよ。