6日の上海市場。オフショア人民元が7の大台で推移するなか、人民銀行は毎朝設定する人民元基準値を1ドル=6.9683元に設定した。この基準値から上下2%の範囲内で6日のオンショア人民元相場は変動することになる。

実に絶妙な基準値設定だ。前日終値より元高で、危機ラインとされる7の大台は回避している。しかし、2%の変動範囲の安値圏には7台が入る。
この人民元相場誘導の司令塔が、易綱人民銀行総裁と郭樹清副総裁だ。
郭氏は人民銀行の肩書では易氏より格下だが、党の肩書では、共産党委員会書記で、共産党委員会副書記の易氏より格上である。
しかも、郭氏は銀行と保険の監督部門統合で発足した銀保監会の主席も兼務する。
筆者が8年間アドバイザリーを務めた中国民間銀行内では「泣く子も黙らせる」と恐れられていたほど強い監督権限を持つ監督機関だ。
人民銀行内では、易氏が外の顔。郭氏が実務を掌握する。
この二人の上に、米中貿易閣僚級交渉で中国側を代表する劉鶴・経済担当副首相がいる。
易氏は米国の大学で教鞭を取るほど英語は達者で欧米市場に精通している。
欧米で開催されたフォーラムなどの常連で、中国経済について中国側の見解を主張する立場にあった。
欧米国際金融市場との接点も多く、外為市場における人民元の立ち位置を理解している人物だ。
人民元相場が7の大台を突破する意味は熟知していると言えよう。
いっぽう、郭氏は、習近平政権の意向を受けて動く。時あたかも政権と党長老が集う北戴河会議が進行中だ。
トランプ大統領の対中追加関税電撃発表の対抗措置として人民元安誘導の指示を受け、人民元基準値設定の指揮を執る立場と言えよう。
もし、6日の基準値が7台に設定されていれば、世界株安の連鎖は続いたであろう。
しかし、6台に設定されたことで当面は危機が回避された。
同時に、変動範囲の安値圏は7台に入ることで、トランプ氏の「為替操作非難」の恫喝には屈せず、北戴河会議でも弱腰の誹りを受けることはなかったのではないか。
 

7月31日に上海で開催された米中閣僚級貿易協議は、僅か4時間ほどで終わり、成果なくライトハイザー通商代表とムニューシン財務長官は帰国した。
その結果をホワイトハウスでトランプ氏に報告した直後に、対中追加関税を発表するトランプ・ツイートが流れた。
市場は、中国の報復措置に注目した。
結果は、貿易戦争が通貨戦争に飛び火した。
中国側は、「待ち」の作戦のようだ。
トランプ氏が、対中批判を強めれば強めるほど、米利下げの確率は上がってゆく。
FOMC後の記者会見でもパウエルFRB議長は米中貿易摩擦を利下げ決定の重要要因として注視と語っていた。
FRBが利下げ回数を増やせば、ドルには売り圧力がかかり、相対的に人民元レートは上昇することになる。
ここは、市場の実勢に任せ、人民元安のスピードを減速させるほうが得策であろう。
追加関税についても、今回は、日用消費財が多く含まれるので、米国市民が感じる痛みも強くなる。
米国農産畜産品の購入停止についても、米国生産者の忍耐が限界に近い。例えば、中国人が好む豚肉。
中国国内ではアフリカ豚コレラ発生により国内での豚肉生産が止まった。米国からの輸入依存度は高まる。
米生産者としては販売拡大の絶好のチャンスだ。
このような状況下で、中国側としては、2020年大統領選挙を視野に動くトランプ氏が、票田からの不況音を無視できなくなる時を待つ姿勢と見える。
果たして、中国経済が、消耗戦に耐えうるか。
習近平政権にとっては大きな賭けだ。
香港情勢も放置できず、問題山積の中で、米中綱渡りは続く。

かくして、危険な賭け、綱渡りを不安視する市場では、金価格が1,490ドル近くまで続騰中。久しぶりの大相場。
 

それから、今朝の産経新聞一面記事で詳しくコメント。渋野日向子選手帰国写真に並び掲載され光栄です(笑)

https://www.sankei.com/economy/news/190806/ecn1908060024-n1.html