米中貿易戦争がハイテク覇権争いという核心に戦線拡大するなか、市場は要人発言に一喜一憂してきた。
大阪G20で、米中トップの手打ちがあるとの楽観的見解が目立った。
とはいえ、6月28,29日のG20まで、まだ一か月以上ある。
ヘッジファンドは待てない。しびれを切らす。
なにもせず、キャッシュポジションを増やすだけでは、顧客からの解約が増えるだけだ。
とにかく動かねば、との焦燥感が透ける。
売りから入るか。買いから入るか。
そこに中国側が国営通信、政府系新聞を通して米国非難の論調を強めると、売りには格好の口実と化す。
しかも、前日発表されたFOMC議事録で、まだ利下げには動かないことがほぼ確認された。パウエル・プットは期待薄だ。
企業決算発表では、業績が良くても、アナリストからの質問に答え「関税10%と25%の違いは大きい」との発言があれば、ただちに売られる。
債券市場に目を向ければ、米10年債利回りは2.32%、同3か月債は2.36%と、逆イールドが再び顕在化してきた。
外為市場では、人民元がジワリと危機ライン1ドル=7人民元に接近中だ。
商品市場では、原油の下げっぷりが目立つ。米中通商摩擦由来の需要減観測に米国在庫増が加わり、WTIは5%もの急落を演じた。中東緊迫の強い買い材料をかかえる市場が、これほどの下げ幅を見せることに市場は驚く。
安全資産の金も再び買いなおされ10ドル幅で反騰中だ。
今後、市場を刺激しそうなことは、米中国内での愛国心を煽るごとき言動だ。
米国側では、そもそも「中国叩き」は民主党のお家芸だ。叩けば、とにかく票は稼げる。ここは超党派での議員発言が目立つ。
消費者も、いよいよ貿易戦争の痛みを実感し始める時期だ。
25%追加関税発動後に出荷された中国製ベビー用品がそろそろ米国に到着すれば、米国のママさんたちも、価格転嫁を痛感するだろう。サプライチェーンは複雑化して、他国製品、自国製品での代替は容易ではない。
ファーウェイ排除の影響も、対象商品がスマホだけに、消費者を直撃する。
中国側も天安門事件30年関連行事を控え、愛国心が刺激されやすい状況だ。
米国製品やハリウッドなどの米国文化を狙い撃ちのボイコットなどが火種となりかねない。
ファーウェイ問題は、ハイテク覇権に関わることゆえ、絶対に譲れない。
「今年は5月も6月も売りか」
市場心理悪化を嘆く声がウォール街から流れてくる。