日米で株高が進行している。
外為市場では先週末にかけて111円前後から一気に112円前後まで円安が進行した。
日本では、株高で「安全通貨」としての円が売られ円安、と解釈される。
ところが、米国では、株高で「安全通貨」としてのドルや「安全資産」としての米国債が売られ、外為市場ではドル安になった、とされている。実際に、12日のドルインデックスも前日比で0.2%ほど下落した。同じく安全資産の金も売られている。1300ドル台から再び1280ドル台に下落中だ。(グラフ添付)
 

チャート

NYのヘッジファンドでも「安全通貨は米ドル」との認識が根強い。
12日に米国債券市場では、米国債が売られた結果、10年債利回りが2.5%台前半から同後半まで上昇しているが、米外為市場ではドルが売られていることも示唆的だ。
では、NY外為市場で、ドルが売られ、買われた通貨はといえば、ユーロである。ドルユーロは世界の外為市場で最も売買量が多い通貨ペアだが、そのユーロの対ドル相場は12日に1.12台から1.13台へ上昇した。市場では、過度な欧州悲観論への反省機運もあり、投機的ユーロ売りの巻き戻しが進んでいる。これも重要なドル安要因だ。
日本市場は為替といえばドル円という発想だが、NY市場では為替といえばドルユーロが連想される。
日本では、今週15、16日にワシントンで開催される日米貿易協議に注目が集まっているが、NYのヘッジファンドは、「そういうこともあるのか」と言われて気が付く程度で、関心は強くない。為替条項についてムニューシン財務長官が発言しても、当然のこと、と受け止めている。
では、円独自の要因として何に注目するかとなると、やはり日銀との答えが目立つ。日銀追加緩和の手詰まり感で円高が進行するシナリオを特に注目している。日銀が緩和負けするとの読みだ。

この市場における日米温度差は、来る日本の10連休に露わになる可能性がある。
円相場がNY市場の判断基準で動くことが予想されるからだ。

特にNY発の外電観測記事には要注意だ。日本の留守中に日銀金融政策に関する英文報道が独り歩きして、円相場が乱高下するリスクには要注意だろう。
更に、時を選ばぬトランプ大統領のFRB利上げ批判が、外為市場でドル安・円高圧力を誘発する可能性がある。
現職大統領が、FRBの利上げなかりせば、NY株価は5千-1万ポイントも高く、経済成長率は4%を超えたとの観測をツイートするなど異例中に異例だ。2020年米大統領選挙を視野に、再選確保のためには手段を選ばぬ姿勢が透ける。
いまや、ドラギECB総裁まで、中央銀行への政治介入を憂う発言を始めた。「ミスター・クロダの見解は如何に」との質問も聞かれる。日銀が、仮にも一般論にせよ中央銀行の政治的独立に言及すれば、思わぬ投機的円高を招きかねない状況である。
日本の10連休を、ヘッジファンドは「チャンス」と見ている。
そして、NY金は、NY市場のドル相場に反応して動く。