昨日NY株価はダウ平均が寄り付き後200ドルを超える反騰を見せ期待を持たせただけに、午後の300ドル超急反落が市場の失望感を増幅させた。
株価上げ要因は少なくない。
まず、原油価格が12日連続安後、やっと下げ止まった。とはいえ、WTI原油先物は56ドル台の安値圏に留まる。OPEC減産合意が原油価格回復にどの程度寄与するのか。NOPEC(OPEC素通り現象)が危惧されるなか、市場は測りかねている。
そして、今週最大級の注目米経済統計とされた消費者物価上昇率。先週発表の生産者物価上昇率が予測0.3%に対し0.6%とかなり高めに出たので、益々注目度が高まっていた。結果は、コアで事前予測年率2.2%のところ、2.1%とやや低めに出た。僅か0.1%の差だが、市場のインフレ懸念が強まっていただけに、反動で安堵感も強まる。米利上げ観測もやや後退して、米株価にはプラス材料となる。
そして、正念場のブレクジット交渉。午後遅くになって、メイ首相がようやく閣内一致をとりつけたと発表。ユンケルEU委員長も、ツイッターで「決定的」進展と評価。ダウも直後は急反発したが、それも持続はできなかった。これから議会承認の関門が控える。まだ予断は許さぬと、市場にはあくまで慎重な見方が根強い。
更に、通商関連では、まず、民主党議員がNAFTAに代わる新たな北米貿易の枠組み構想に対して悲観的な見解を述べた。はやくもネジレ議会のリスク顕在化と市場は受け止める。更に、マルストローム欧州委員(通商担当)が、米国の自動車含む関税引き上げには、「報復」という言葉を連発した。「あくまで交渉による和解を望む」とも繰り返し述べているのだが、市場では「報復」の見出しが一人歩きする。
中国の小売り売上指標も、8.6%増と悪くないのだが、伸びが減速で5か月ぶり低水準とされ、懸念材料と化す。中国といえば、悪い材料探しの傾向が強い。これも市場のセンチメント(心理)であろう。
米株式市場内の最大の気がかりは、なんといってもアップル株の下げが止まらないこと。昨日も2%超下落した。牽引役の看板商品売り上げ不安は、世界経済減速を映す代表的な事例とされる。
原油価格下落も、年末商戦控え消費マインドには明るい材料だが、新興国経済減速を映す事例としても引き合いに出される。
債券市場では米10年債利回りが一時3.2%突破していたが、今や3.1%台の攻防となっている。債券は買われ、株式は売られる。株式市場は楽観論で育ち、債券市場は悲観論で育つもの。
このドル金利安が外為市場ではドル売り圧力となる。しかし、欧州不安に発するポンド売りとユーロ売りの同時進行の結果としてのドル買い圧力が優り、ドルインデックスは97台で高止まりの様相だ。円は安全通貨として買われる局面もあり、やや円高に振れた。
商品市場では、原油急落に連れ、ドル高に反応するかたちで金が1200ドルの大台を割り込んでいたが、NY時間午後に突如10ドル強急反発した。これだけ市場のリスクが顕在化すると、米国債・円と並ぶ安全資産探しが始まった感がある。
かくして、世界の投資家が模索するのは、2019年が本当に景気の曲がり角となるのか、という命題だ。ドル長短金利差縮小・逆イールド懸念が、まさに過去景気後退入り直前に生じた現象として不気味な兆しと見られる。原油急落も供給サイドの過剰感と同時に、需要サイドで世界経済後退を映す事象とされる。FRB内でも、利上げが3%程度に留まれば、次の景気後退局面で利下げという伝統的経済政策を発動する余地が限られることへの危機感が活発に議論される。
このような市場環境で、投資家はどうすべきか。
米国ではFPたちが、2年債で年率3%近く貰えると短期国債保有で凌げと説く。確かに、低インフレ継続を思えば、悪くない選択であろう。株式投資でリスクをとっても、それに見合うリターンが期待できず報われない感が強い。
とはいえ、バフェット氏はアップル株買いと明言してきた。更に、日本時間今朝に次々に明らかになっている2018年9月末時点での主要ファンド保有銘柄開示(通称13F)によると、同氏率いるバークシャーハサウエイがJPモルガンとオラクルを7-9月期に購入したことが確認されている。
カリスマ長期投資家は粛々と株購入を進めているようだ。
NY金は、逆イールドの現実味が増すと買われるだろう。
短期的には、空売り買戻し(ショートカバー)による短期的急騰が一巡後、新規買いが続くか、がポイントとなる。