先週金曜日のNY市場で興味深い変化が見られた。

オープン直後、ダウ平均は200ドル超急騰したのだが、2月ISM製造業景況指数が2年ぶりの低水準と発表され、一転急落したのだ。

たしかに内容が悪い。前月56.5から54.2まで低下している。事前予想は55台であった。低下は新規受注、雇用、生産など広範囲に及ぶ。

しかし、これまでは、景気指標が悪いと、FRBが更に利上げ・量的引き締めには慎重になるとの見方から、株価が上昇するケースが多かった。悪いニュースが良いニュースとなったのだ。

しかるに、月が変った3月1日には、悪いニュースが素直に悪いニュースとなった。

なぜか。

結論から言うと、FRBハト派姿勢が市場にはほぼ織り込まれたからであろう。年内の利上げは「無し」の確率が今や93%。注目のFRBバランスシート圧縮は年内に前倒し終了の可能性をパウエルFRB議長は議会証言で語った。

こうなると、市場は、FRB金融政策効果の限界を意識し始める。

これ以上の「パウエル・プット」は期待できない。打ち出の小づちも出尽くしたとの感覚だ。

政策期待で買ってきた投機筋は、利益確定売りの口実探しを始めている。

ISM指標悪化は、まさに、格好の売りの理由となった。

そもそも冷静にパウエル証言を読み返せば、結局はハト派・タカ派両論併記して「データ次第」で柔軟に対応としている。

マーケットは反省モードに入ってきた。

2019年も3月入りしたばかり。年内利上げ無しと決めつけるのは早すぎるのではないか。93%という確率も、「データ次第」で大きく振れる可能性がある。

「FRBはこれで終わったわけではない」とのダドリー前NY連銀総裁の発言が注目されるような地合いになる。

この市場センチメントの変化は、まず債券市場で顕在化した。

米10年債利回りが2.6%台まで低下していたが、2.75%まで戻してきている。

この金利上昇に反応して、外為市場ではドル高、そして円安が進行中だ。

商品市場では、金利を生まず利上げを天敵とする金の価格が、2月には1350ドル近くまで急騰していたが、1日には1300ドルの大台を割り込んでいる。

 

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FRBハト派化を見込んだ「ハト派・トレード」の巻き戻しが顕在化してきた。

なお、政治要因としては、米朝会談より米中通商協議のほうが、市場への影響は強い。全人代期間中は米中貿易戦争も休戦との見方で市場は小康状態を保っている。表層雪崩を繰り返しつつ価格水準を切り上げてゆく展開となろう。

以上がNY金急落のマクロ的背景だ。

既に金価格は調整局面に入っていたが、1300ドルの大台は維持できると見ていた。しかし、投機マネーがドカ雪のごとく積もり、表層雪崩が起きた。とはいえ、2019年は未だ2回裏攻撃中程度の段階。先は長い。ドカ雪、表層雪崩を繰り返しつつ、相場は地固めをしてゆく。

今日の写真は有名な湯島の白梅。早春を感じるね。

スキー場近辺の山々にも暖かさで雪崩が頻発している。山肌が見える箇所も目立つ。

相場と季節の相関か。

 

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