異常な米株価変動に歯止めがかからない。

昨日は、寄り付き後、「米中交渉好調。良い発表を期待せよ」とのトランプ・ツイートにダウ平均も300ドル超高で応えた。しかし、その後、ジリ安に転換。株式市場のオープニングを狙ったかのようなツイートの本音を市場は見抜いているようだ。更に、ホワイトハウスでの民主党幹部との意図せざる「公開舌戦」がテレビ画面に流れると、市場心理が急速に悪化。一時は200ドル超安の水準まで下げた。一日の変動幅は500ドルを超える。大引けにかけては再び買い戻され、終わってみれば、53ドル安で引けている。

一昨日は、500ドル超急落したのち、急反発を演じ、結局34ドル高で引けた。

AIアルゴリズムによる売買は、ニュースの見出しで、自動的に売買注文が発動される。人間の投資家はおろおろ傍観するばかりだ。もはや、市場不信症の如き空気が漂う。

 

昨日の下げ要因となった民主党幹部との議論は、メキシコとの壁建設のための予算50億ドルを巡る論戦だった。この予算案が通らねば「政府閉鎖も辞さず」とテレビカメラの前でトランプ大統領が公言した。「政府閉鎖」のキーワードが売り注文発動を誘発したのだ。本来、非公開のはずの民主党幹部との話し合いゆえ、意外性もサプライズとなった。市場には、来年1月1日から現実化するネジレ議会混迷の予告編とも映った。

その政府閉鎖リスクだが、機械は売りに動いたが、人間のアナリストたちの大半は、影響限定的と見ている。部分的な閉鎖で国民の日常生活に甚大な影響を与えるほどの規模ではない。「シャットダウン=閉鎖」という語感のほうが強い印象である。

 

いっぽう、市場が気味悪く感じる下げ相場の兆しも顕在化してきた。

逆イールド現象に加え、SP500株価指数がデッド・クロスとなりつつあることだ。

50日移動平均線と200日移動平均線が下げる過程で、50日線が200日線を下抜ける現象である。

短期的に下げ相場入りの兆候とされる。これも、アルゴリズム取引を刺激するキーワードの一つだ。

但し、中期的には底値圏を形成する結果になるケースも少なくない。

 

さて、この異常な株価乱高下現象はいつまで続くのであろうか。

来年前半、ネジレ議会に市場が慣れるまでは止まらないのではないか。更に、人間がコンピューター売買のスイッチをOFFにしないと止まらないのかもしれない。

投資家心理の面では、来年、本当に景気後退となるのか、という不安感が市場内には根強い。そこで景気テコ入れ策として、まず、金融政策への期待度が最も高い。しかし、肝心のFRBの金融政策に手詰まり感が漂う。歴史的に、リセッション入りすれば、FRBが計5%程度利下げしてきた。ところが、今回は中立金利が3%程度、あるいはそれ以下ゆえ、いざ利下げのときに、金利面での金融緩和には限界がある。そこで、現在進行中のFRB資産圧縮が注目される。量的緩和政策で約4.5兆ドルまで膨らんだFRBの資産規模を、今年は毎月最大100億ドルのペースで削減中だ。これが来年は毎月最大500億ドルに加速される予定だ。

そもそも資産圧縮ということはFRB保有の米国債MBS(住宅担保債券)を市場への売却により減らすことを意味する。ゆえに債券市場では金利上昇効果がある。

では、FRB資産圧縮は利上げ何回分の引き締め効果があるのか。月500億ドル(5兆円強)ともなれば、利上げ一回分に匹敵するのではないか。否、二か月で利上げ一回分か。など市場内に議論が飛び交う。

これが、一転、金融緩和となれば、FRB資産圧縮停止となろう。しかし、金融政策としては未知の海域を海図なしに航海するようなもので、政策効果が測りかねる。債券市場では金利乱高下を招くリスクがある。

このような金融政策に対する不信感が、株価乱高下の大元に巣くっていると筆者は感じている。

政府閉鎖問題も、今回はメキシコとの壁建設予算捻出に限定されるが、ネジレ議会で歳出上限・財政赤字懸念が顕在化して、米国債格下げなどが視野に入ると、市場への影響も無視できまい。

株価乱高下は、荒れ模様必至の2019年相場に身構える市場心理を映す現象といえよう。

来年は「金」の出番が来る予感。

 

今日の写真は、パレスホテルのケーキ。マロンのタルトが旨かったな。お堀に面した屋外の席に座ろうと思ったが、寒い!屋内に()

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