NY市場が引けた直後、ホワイトハウスからトランプ大統領とユンケル欧州委員長との共同記者会見の映像が流れた。
引け前から、「米欧通商合意近し」との観測が材料視されダウ平均も172ドル急上昇していた。
記者会見では、トランプ大統領が、米欧通商交渉の目標として「ゼロ関税、非関税障壁ゼロ、補助金ゼロ」を強調、連呼した。
しかし、対象は、本丸の自動車を除く産業製品だ。
米欧貿易戦争エスカレートという最悪のシナリオは暫時回避されたが、市場にはモヤモヤ感が残る。
米欧両サイドの見解の差は容易に埋まらない。
トランプ大統領は米国CNBCとのインタビューで、「ユーロを見よ」EU側は通貨安政策を採り、米国は不利な立場にあると非難。
「米国はEUとの間で、これまでに1,500億ドル損している。
EUは、たやすく儲けて、彼らの通貨は安くなっている」と主張している。
対して、1,500億ドルの損失というのは、モノの貿易赤字。米国経済の好調な需要を映す数字、というのが欧州側の言い分だ。
そもそも、米欧間ではTTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)がまとまらず棚上げになっている。
総論賛成でも各論となると、米欧ともに譲らないからだ。
米国政権が保護主義路線を強める今、今回のトップ会談で、事態が大きく進展すると考えるほど楽天的にはなれない。
「交渉継続中に、関税を引き上げることはない」とのユンケル発言が、今回の進展といえようか。
市場は、米欧通商交渉の真の合意に向けての本気度を探っている。