2019年の米国経済成長が3%台維持は難しい。2%台へ減速を市場は織り込み中。1%台以下へ失速の可能性もちらつく。

減速なら軟着陸。失速ならハード・ランディング。議論は割れる。

最新の2018年12月雇用統計を見る限りは絶好調だ。新規雇用者数は事前予測をはるかに上回り31万2000人増。しかも、最も注目された平均時給も前年同月比で3.2%増加。失業率が3.9%と上昇したが、これは労働参加率が63.1%に上がったゆえの現象と解釈される。

しかし、雇用統計は遅行指標だ。今後の懸念材料は山積している。

米中貿易戦争、中国経済減速、ブレクジット、米政府機関閉鎖長期化観測、揺らぐ金融・財政政策、良識派更迭のトランプ政権内空洞化など枚挙にいとまがない。

市場内セクター別では住宅関連とエネルギー関連ハイイールド債が懸念視される。

23日には米銀行界の「顔」ともいえるダイモンJPモルガンCEOが、ダボスで米国景気後退の可能性を示唆して注目された。いわく「米国を船に例えれば、進行航路上に色々なブイ(浮標)が並んでいる。」極めて危険な海域の航海と警鐘を鳴らしたのだ。金融財政政策がリスクという。

利上げ判断が揺らぐFRBへの不信、ネジレ議会での債務上限など財政政策不安。これこそ、市場のボラティリティーを高めている主要因だ。23日のNY市場もダウ平均が300近くまで急騰後、一時はマイナス圏に沈み、結局171ドル高で引けた。この上昇幅は、決算好調だったダウ平均銘柄のIBM、ユナイテッド・テクノロジーズ、プロクター・アンド・ギャンブルの3社の株価上昇に尽きる。より広範なSP500社平均指数は「微増」に留まる。なお、現在進行中の米企業決算の特徴は売上が増えても利益が伸び悩む「コスト圧力」が指摘されている。

とはいえ、ゴールドマンサックスは「米国景気後退の兆候は見えない」と見る。過去の景気後退前に見られた金融システム不安定化、緊縮財政、オイルショックなどが未だ顕在化していない、と論じる。

減速は覚悟、景気後退は回避。これが現時点でのマーケット内多数派の期待を込めた見解であろう。

いっぽう、ダボス会議に出席しているカリスマ・ヘッジファンドのレイ・ダリオ氏は。2020年に景気後退と警告する。そもそも昨年のパフォーマンスが記録的に悪化したヘッジファンド業界には悲観論が目立つ。

23日には、これもカリスマ投資家と人気の高いグリーンライト・キャピタルのアインホーン氏が、2018年実績マイナス34%と会員に発表。「昨年は年間を通して何もうまく行かなかった。割安株を狙うバリュー投資が効かなかった」との発言が市場の注目を集めた。解約相次ぎ、運用資産も120億ドルから25億ドルへ激減と米メディアは報じている。

今週は、「サブプライム危機に買った男」として名を馳せ、日本の機関投資家にも人気が高かったヘッジファンドのポールソン氏も、運用資産半減により、今後は自己資産運用に特化すると発表していた。これは、業界で、「実質的引退」とされる。

 

まだ1月も終わらない時点で、早くも、19年経済成長率・株価予測下方修正相次ぐという異常な事態だ。

金価格予測には変わりなし(笑)