ドイツのオートバーン(超高速道路)は全長1万3千キロに及びますが、スピード制限が無いことで有名です。私も車の助手席に乗ったことがありますが、日本人にはスリル満点()

ところが、最近、政府諮問機関が、130キロのスピード制限を導入すべし、と勧告したことが、話題になっています。安全性維持と排ガス抑制が導入理由です。

しかし、ドイツ人の多くは猛反対。200キロのスピードで突っ走るのは、ドイツ人にとって、日常のプレッシャーからの解放。更に、ドイツ自慢の技術の誇りなのです。それを否定されると、ドイツ人は落ち込むようです。

特に、最近、ドイツは落ち目。トランプ、プーチン、習近平に包囲網を敷かれたごとき状態で、経済指標も昨年末から急速に悪化しています。

メルケル首相の求心力は衰え、後任もまだ未知数。

EU離脱する英国には「勝手に出て行け」と言わんばかりですが、内心、出て行かれても困るのです。ドイツと英国の経済関係は緊密ですから、優良顧客に逃げられると商売に響きます。

その隙を狙って、中国とロシアがドイツでの存在感を高めています。トランプ大統領もメルケル首相とは犬猿の仲です。

かくして、ドイツ人が内向きになっているときに、超高速ドライブの爽快感をドイツ人から奪うことに、抵抗感があるのでしょう。

 

とはいえ、EUを支えている大黒柱は、落ち目とはいえ、ドイツ以外にありません。フランスは経済的にも格下ですし、「黄色いベスト」反政府運動でマクロン大統領の支持率は急落しています。強がって、EUのリーダーを気取っていますが、役不足は否めません。メルケル首相も、EUの対ロシア、対プーチンとの対話では欠かせない存在でした。旧東ドイツ出身で、ロシア語が話せるからです。

今、問題になっている天然ガスパイプラインがあります。ウクライナを通さず、ロシアから欧州へ直送するルートです。これが出来ると、ウクライナの収入が激減して死活問題になります。フランスなどEU諸国は、ウクライナ占領に抗議して対ロ経済制裁を課しているので、このパイプライン建設は反対の姿勢です。しかし、エネルギーをロシアに依存するドイツは賛成に回っています。

この事例のように、国益が異なると、対ロ、対中国政策も、EUとして団結できない状態になるのです。これこそ、ロシア、中国の思うツボでしょう。

こういう事例もあります。

鉄道車両製造といえば、大きな基幹産業ですが、世界第2位ドイツのシーメンス、第3位フランスのアルストムの二社が統合に動いたところ、EUが独占禁止法を盾に待ったをかけたのです。世界第1位はダントツで中国中車(最大級国営企業)なので、中国への対抗策として、欧州の「チャンピオン」鉄道会社を目指したのですが、EUのお役人たちは独占状態になると価格操作など弊害が生じると却下。結果的に、中国中車がドイツでも存在感を高める可能性があります。

もはや、ドイツの技術が世界をリードする時代は終わりました。高速度スピード無制限は、ドイツ栄華の時代の象徴だったのですね。

なお、プラチナを排ガス清浄化触媒に使うディーゼル車を規制する動きが欧州では勢いを得ています。電気自動車も含め、プラチナ受難の時代。でも、ここまで金との値差が拡大すると、さすがに下げ渋っています。プラチナは残る。

 

そして、今日の写真は、梅の季節。「梅園」にて。まだ2分咲きくらい。

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