今日の日経朝刊社会面に宝飾品買取り実態調査、同じ商品で店により買取り価格に5割の差という記事が出ていたので、私見を述べたい。

 

 

「色石だけは分からない」

宝飾業界で一般的に交わされる会話だ。それほどに鑑定は難しい。

筆者は、骨董の鑑定程度に見ている。

そもそも、エンハンスメント(加熱処理)による美化は「業界の常識」であり、何が真の価値なのか、定かでない。

エメラルド、サファイアなどの色石に比し、ダイヤモンドは重量、色、透明度など一定に基準である程度の標準化は可能だ。

それでも、結論から言うと「月給3か月分」程度の価格のダイヤモンドを買い取りに出しても、まずまともな値はつかない。

高額な買い取り価格が提示されると、抱き合わせで何か高額品を販売する仕掛けかと深読みしてしまう。

 

最も価値が明瞭なのは、金プラチナなどの貴金属だが、これとて、業者による買取り価格にはばらつきが目立つ。

日曜午後のショッピングモールで「週末限定、宝飾買取りコーナー」なるものが出ていたので、早速買取り価格をチェックしたことがあるが、まともな買い取り価格に比し、15%程度安く設定されていた。

それでも、顧客の女性は、「タンスの肥やし」と化していた古いネックレスが現金化されたことで、思わぬお小遣いを得た感覚で、業者に礼まで述べていた。

買うときには少しでも安くと粘るが、売るときには売れてラッキーと思うようだ。ご用心。

当たり前のことだが、信頼できる業者を選ぶことが大切である。

 

そもそも宝飾業界は細分化されている。

ユーザーの女性が「他人とは違う自分だけの宝飾品」を求める傾向があるので、少量多品種の製造となり、規模のメリットが効きにくい。企業数は多いので、信頼度はばらつく。

購買傾向にも大きな変化が生じている。

若い女性の間では、そもそも宝飾品を身につけないことがファッションとなりつつある。

首肩を露出しても、そこをネックレスで飾るより、エステで鎖骨を磨くほうにおカネを使うのだ。

業界にとっての稼ぎ頭だったブライダル需要も低迷している。

「給料3か月分」で婚約指輪を買うより、ハネムーン旅行や家具食器の類に予算を割く傾向が顕著である。

 

宝飾品店頭販売動向をチェックすると、バブル期に比し、30歳台と50歳台男性の宝飾品購入が激減している。

前者は所謂「貢ぐ君需要」、後者の実態は「不倫需要」と推定される。

ユーザーの宝飾品に対する思い入れが薄れるなかで、販売より買取りが活性化することも時代の流れであろう。

 

業者の新旧交代も進み、専門知識を持たない新規参入組が増えた。

買取り価格のばらつきも、当然の結果と思える。