トランプ大統領とウオールストリートジャーナル紙が、期せずして、12月利上げ反対キャンペーンを張っている。
WSJ紙は「今はFEDが休むとき」と題する社説で、「FRB中立金利がどの水準にあるかについては、我々もFEDも分かっていない。パウエル氏は金融政策運営を、暗闇の部屋を手探りと語ったが、そうであれば、ゆっくり歩けばよい。米中貿易戦争も今後の展開を見極めてから来年動けばよい」と論じた。「インフレ懸念はない。金価格が上がっていない」とも引き合いに出されている。
それに呼応するかのようにトランプ氏は、「FRBは今日のWSJ紙社説を読め。FRBは再び過ちを犯すな。再び過ちを犯すな」とツイート。
本欄既報のように、カリスマ投資家グンドラック氏も、利上げするFRBは「suicide mission 特攻隊」と表現している。
12月17日のウオールストリートジャーナル紙でも、カリスマ・ファンドのドラッケンミラー紙とウォーシュ元FRB理事が「FED引き締め?今はときにあらず」と題する共同寄稿で利上げ反対論を展開した。
これで12月利上げは先送りされるとは思えないが、パウエル氏は、反対論渦巻くなかで実質的にクビをかけた如き背水の陣で臨むことになる。
筆者は、同情に値する、と思う。
そもそもバーナンキ元FRB議長が有事対応として始めた量的緩和政策(QE)。カネをばらまくのは簡単だ。継いだイエレン元議長は、その後始末、即ち、ゼロ金利からの脱出と膨張したFRB総資産の削減という「金融正常化」の道筋をつけた。そして、パウエル現FRB議長は、世界経済成長鈍化の環境で、ばらまいたマネーを回収する量的引き締め(QT)を実行するという、かなり損な役割を果たさねばならない。だから、同情に値する。なにせ、量的緩和そのものが非伝統的金融政策で「壮大な実験」とされた。そのうえで、量的引き締めは、荒海で海図なしの航海を強いられる。前例もなく、政策効果は未知数だ。薬に例えれば過少投与か過剰投与のリスクがある。
先述のトランプ・ツイートでは「500億を止めろ」と語られている。これは、来年から本格化する予定のFRB資産圧縮プログラム月間500億ドルを指すと解釈される。いま、FEDウオッチャーの間で熱く議論されていることを、おそらくクドロー国家経済会議委員長あたりが、入れ知恵したのか、と筆者は勝手に推測している。
たしかに、毎月日本円換算で5兆円(年間では約60兆円)ほどを市中から回収した場合の引き締め効果に関する実例の資料は皆無だ。初の試み、否、賭けに近い。
イエレン氏が設定した月間資産圧縮量のペースを市場は織り込んでいる。
それゆえ、圧縮量が変更されると、量的緩和を縮小すると発言しただけで市場が大混乱に陥ったバーナンキショックの再来も懸念される。
利上げとQTの二面作戦は、FRBに危険な綱渡りを強いる。
日本とて他人事ではない。いつか日銀も直面必至の問題だ。その予告編を2019年にかけて見守ることになろう
今日の写真は、毛ガニ。寿司屋で供されたが、実は、私はカニに無関心。決して嫌いではないし、おいしいと思うよ。だけど、値段に見合うかといえば、どうかな。だから、私みたいな感動しない人が食べるより、蟹大好き人間が食べるほうがいいと思う。そうでなければ勿体ないよ。同じく、フグ、マツタケ、も私は嫌いじゃないけど、感動はしない。安くないから、勿体ない。グループの会食なら、好きな人にお皿を譲る。