パウエルFRB議長議会公聴会証言の翌日に、トランプ大統領のFRB介入発言が飛び出した。
利上げは好ましくない、という表現より個人的な感情で「面白くないnot thrilled(スリルを感じない)」「ハッピーではないnot happy」と語っている。
金融政策の独立性を多少なりとも自覚していれば、そのような表現を使うはずがない。
トランプ大統領はパウエルFRB議長を「トランプ・チャイルド」と見做しているのか。
「私は、FRBにとても良い人物を送り込んだ」との発言は、利上げ関連発言より由々しいのではないか。
「私は彼ら(FRB)が最善と考えるやり方をやらせている」ここでlet them do(やりたいようにさせる)との言い回しも気になる。
一般企業での子飼い社員に対する社長のコメントを彷彿させる。
総じて、いつものトランプ流の口語的言い回しで中央銀行の金融政策をけなしている。
「これは私が一市民であれば言ったであろうことを語っているのだ」と述べた後に「大統領として言うべきことでないかもしれない(maybe=かもしれない)」と語っている。
断定的にFRBの政治的独立性を守るとは述べていない。
明らかに金融政策に関する知識が欠如している。
それを自覚せず、言いたい放題との印象を受ける。
本欄でも昨日「パウエル氏の正体」の最後に「そもそもトランプ大統領に任命され、記者会見では「ジェイ」とファーストネームで呼ばれ、肩を叩かれ、市場では「FRBの政治的独立性」が危惧されている。
「これがパウエル流」と印象づけることも、広義のフォワード・ガイダンス(将来の政策明示)といえるかもしれない」と結んだばかりだ。
パウエル氏がまともに本件に関して発言するとも思えない。大人の対応を貫くだろうが、イエレン前議長と異なる物言いいで、独自性を印象づけることが、せめてものパウエル氏の反論になるのだろうか。
次回のパウエル氏記者会見では、この問題に質問が集中しそうだ。
なお、市場への反応はNY市場でドル安円高に振れたが、トランプ大統領がこれまでも低金利選好を示唆する発言していたので、大きなサプライズはない。
ドル高は米国株価にはマイナス材料となる事例もあるので、あえて言いたいように言わせておくと言う思惑も透ける。
とはいえ、今後、トランプ大統領がこの発言に関する質問を受けたときに、その日のご機嫌悪く過激に語ると、外為市場でのドル売り・円買いを誘発する可能性が残る。
基本的には市場のセンチメントに悪影響を与えるような材料が増えたようだ。日米通商交渉の過程でも、これまで以上に円高懸念が意識されよう。