原油市場を揺らせていたサウジ記者殺害疑惑問題が、株式市場にも飛び火している。
サウジアラビアを実質的に支配するムハンマド皇太子は、果たして、先進的国家指導者なのか、独裁者なのか。女性の自動車運転解禁をもてはやし利権に群がってきた人たちも、サウジ関連ビジネス見直しを強いられる。特に強権政治、人権問題、イエメン・カタールなど隣国への介入という負の側面が改めて懸念される。
中東問題への影響も深刻だ。
サウジアラビアは世界最大の原油輸出国且つ世界最大の武器輸入国である。
米国を含め欧米諸国が経済制裁に動けば、ロシア・中国が「漁夫の利」を得る。
サウジとの外交的距離感には慎重にならざるを得ない。
特にロシアはイラン、イスラエル、エジプト、トルコそしてサウジアラビアと外交的関係を築きつつある。対して、米国は、サウジアラビアとの関係が悪化すれば、残るはイスラエルのみと言っても過言ではあるまい。中東地政学的リスクには慣れているはずの市場も、今回は目の色が変わっている。
時あたかも、トランプ政権は、サウジアラビアと米国共通の敵国であるイランへの経済制裁を再開。11月4日までにイラン産原油輸入禁止を呼び掛けている。同時に、中間選挙を控え、トランプ大統領は庶民の生活を直撃する原油高の元凶はOPECと非難を繰り返す。現在の米中東外交政策と原油安は同時実現は無理筋だ。そもそも、イラン産原油供給減を補う生産余力ある有力国がサウジアラビアである。
このような状況下で日量7百万バレル前後を輸出するサウジアラビアからの供給懸念が顕在化すれば、原油価格100ドルは即現実となろう。
原油高を買い材料とする株式市場だが、悪性の原油急騰は市場センチメントを冷やす地政学的リスクとなる。サウジアラビアが外交面で原油を「武器」に使うシナリオを懸念しているのだ。
金価格にも当然上げ要因の一つとなる。NY金は1230ドル突破後、反落して1220ドル台。未だ過去最高水準にまで膨れ上がった金先物市場での巻き戻し(買戻し)が続いている。
既にサウジアラビア側が「トルコのサウジ領事館内で尋問中に記者が死亡」を認める意向との報道も流れた。
中東関連材料としてこれまでより重要度は極めて高い市場変動要因である。
なお、米財政赤字が大型減税で6年ぶり高水準というニュースも、本欄で述べてきた「悪性の金利上昇」(中期の金価格上昇要因)として注目される。
昨日は、自由が丘に引っ越した、おなじみイタリアン、マガーリで、なんと金三人衆座談会!亀井幸一郎、池水雄一の先輩(笑)お二人と。日経マネー新年号の金特集別冊に載る目玉企画。おいしいイタリアン食べながら、気楽に本音ベースで2019年金価格見通しを語ったよ。ちなみにマガーリのマダムは池水雄一と商社貴金属部入社同期の仲。今や、貴金属関係者の溜まり場の様相。うちはマダム・シェフと家族ぐるみのおつきあい。3人の意見は基本的に似通っているので、監修役として、あえて私が弱気派の立場で意見を交わし、読者に強気弱気両サイドの考えを理解してもらう趣向。中間選挙前なので、難しい面もあったけど。お楽しみに。